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笑った顔が一番好き*
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「……いひゃいんらけど?」
「んー?何て言ってるかわかんねぇ。」
誰のせいだ、誰の。
俺はそう思いキッと眉間にシワを寄せ睨む。
でも航太は全く気にしない様子で俺の顔を見ながらケラケラ笑っていた。
……ま、いっか。
俺はそう思い頬を緩ませて笑った。
そんな俺を見て、さっきまでいたずらっ子のように笑っていた航太の笑顔が優しいものにかわる。
「そうそう、お前はそうやって笑っていればいいんだよ。俺、お前の笑った顔が一番好き。」
そう言って航太はニカッと笑った。
航太の言葉に引っ込みかけていた俺の涙がまた溢れ出しそうになったけど、俺は航太が好きだと言ってくれた笑顔で航太のことを送り出したくて。
「それじゃ、行くわ。元気でな。」
「おう!…いってらっしゃい!!」
涙をグッと堪えて、とびっきりの笑顔を作った。
航太の心に残る最後の俺が泣きっ面なんて嫌だしね。
笑う俺に、航太も満面の笑みを向けて人の多い方へ歩いていく。
俺はひたすら笑みを返し続けた。
(…………ああ、行っちゃった。)
航太の姿が完全に見えなくなると、俺の目からはプツリと何かが切れたかのようにつらつらと涙が出てきた。
今日俺、泣いてばっかだな……なんて思ったけど最後に笑顔で航太を見送れただけでも良しとしよう。
『そうそう、お前はそうやって笑っていればいいんだよ。俺、お前の笑った顔が一番好き。』
航太の言葉を思い出す。
まさかそんな風に思われていたとは。
「…………俺だってお前の笑顔が一番大好きだよ、バーカ。」
一人呟いたその言葉は誰の耳にも届かず宙に消えていった。
*****
月日は流れ、あれから3年が過ぎた頃。
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