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歪んだ執着(シェス視点)
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アイルが目を覚ました。
記憶はやはり戻っていなかった。
まぁ、それはどうでもいいけど。
「助けてくれて…ありがとう…」
おずおずと、上目づかいで言うところが可愛い。
やっと取り戻せたって気になった。
そして、何も知らないアイルに色々と教えた。
アイルが王子であることや、巫女のこと、騎士、宮殿、奥の殿…様々な情報を与えたけれど、疎まれて宮殿に押し込まれた云々のところは割愛しておいた。そんなことを伝えて、無駄なことを考えてほしくなかったからだ。
だって、アイルは俺だけを見て、俺だけのことを考えていればいいんだから。
「…俺たち騎士は、巫女を守る役目がある」
「そうなんだ…」
「だから、アイルが拐われたとき…すごく、後悔した」
そう、本当に後悔した。
俺だけが囲っていたのに、大切に大切にしまっておいたのに、ちょっと目を離した隙に盗られてしまった。今まではどんな玩具も、盗られても気にしなかった。まぁいいか、とすぐに興味を失った。
でもアイルはダメ。アイルは俺のものだ。俺だけのもの。他の奴らは触ってはいけない。
それなのに、あいつらはそれを無視して盗った。
アイルに触れたすべての奴らを八つ裂きにしてやらないと気が済まない。
…だから、アイルが捕らわれていた場所では散々暴れた気がする。アイルに触れた奴は分からなかったけど、とりあえず片っ端から斬った。
「…守れなくて、ごめんな」
この部屋に鍵でもかけておけばよかった。
もしくは、アイルを繋いでおくとか。
「え、いいよ…だって助けにきてくれたし」
まったく…アイルは分かってない。
俺以外に触れられたっていうことに、もっと嫌悪感を持ってもらわないと。
ああ、そうだ。触られた箇所を全部消毒しないとなぁ…
それから、一応シルヴァーナに会わせてやった。
本当は会わせたくなかった。
でもあのお嬢様がきゃんきゃんとうるさく吠えるから…仕方なく、だ。
あれはなかなか突飛な行動をする。アイルの部屋に忍び込む可能性だってあるんだ。
ま、すぐに引き上げさせたけど。
「少し疲れただろ。休んだ方がいい。本調子じゃないんだし」
「…うん」
ぽすん、とアイルがベッドに腰掛ける。
見上げられて、にっこりと微笑みかけてやる。
さて、恩人への好意を、俺への「好き」に変えるにはどうやって攻めようか。
優しく優しく、どろどろに甘やかしてやろうか…
そんなことを思案していると、アイルが急に震えはじめた。
「…アイル?」
…ああ、なるほど。あのクソじじいが言ってたな。
フラッシュバックってやつだろう。
あの場所での悪夢を思い出して震えているんだ。
そっと手を伸ばす。
「…!!や…っ!触らないでっ!!」
一度振り払われたが、それを押さえ込んで抱きしめた。
…。
怯えるアイルも可愛いなぁ…。
「落ち着け」
「や、いや、こわい、やだ、いやだ…っ」
「お前を抱きしめてるのは俺だ。もう此処に、お前を痛めつける奴はいない」
「…っ、…っ!」
やっぱりアイルって、怯えたり怖がったり、泣いてる顔がものすごく可愛い。
もっと虐めたくなる。
ただ、今虐めたら俺から離れてしまいそうだから、優しくて甘い声で包み込んであげる。
あ、そうだ。
あの場所でされたことを思い出させるのもいいかもしれない。
恐怖で震えるアイルを眺めてやりたい。
絶対可愛い。
それと、どんな風にどこに何をされたのかしっかり聞きださないと。
消毒しないといけないだろ?
「俺がいる。もしあいつらの幻影が見えても、俺が全部斬り捨ててやる。アイルに近付く奴は、全部な」
…しかし釈然としない。
アイルの気持ちを占めるものは、何だって俺じゃなきゃダメなのに。
怯えるのも、泣くのも、笑うのも、怒るのも、ぜーんぶ俺に向ける感情じゃないと。
他の奴らに植え付けられたものを思い出させるのはムカつくな。
アイルの可愛さを堪能するか、他の奴らを思い出させるのを諦めるか…
さて、どうしよう。
ぐずるアイルを宥めながら、にっこりと微笑む。
俺の瞳が狂気に塗れていたなんて、気付かぬまま。
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