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居た堪れない気持ちだった。自分が恭司に言った事は子供が言う駄々と同じだ。
自分のしでかした事を今更後悔する。雅臣に好きだと言われて心が揺らいだ。雅臣に言われた通り、共に過ごす時間の中で、同じ気持ちになれるかも知れないとあの時は思った。
でも、それは飽く迄恭司が居なかったらの話だと思い知らされた。顔を見てれば切ないし、もう無理だと分かっていても好きだと思う気持ちが溢れてきて苦しい。
「すまない......、君を傷付けた。許してほしい。」
「......え?」
どんな言葉で罵られようと仕方がないと思っていたのに、謝罪をされて慌てる。何故、自分が恭司に謝られるのか心底解らない。
そんな凪を恭司はフワリと抱き込んだ。
「自分の気持ちを言わずに凪くんに触れた事、すまなかった。言葉にしなくても、同じ気持ちだと解ると思っていたんだ。」
「 ── !? ......それって、」
「君が好きだよ、凪くん、」
嬉しかった。涙腺が壊れたみたいに涙がポロポロ溢れるほど本当に嬉しかった。でも、同時に自分は恭司には相応しく無いと思った。疑心暗鬼になり雅臣に縋った。よくよく考えてみれば、欲しかったのはただの言葉だ。それを見誤り、雅臣の言葉に心揺らいだ自分のバカさ加減を痛切に感じる。不実だったのは自分で恭司は何も悪くない。
「......ごめんなさい...っ、...ごめ、なさ、...っ、」
「謝られなくていい。君の気持ちを考え無いで自分勝手に振る舞った私の責任だよ。」
嗚咽で言葉を紡げず、フルフル首を振る。優しい恭司の言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。
こんなに、こんなに好きなんだ。
「ほら、もう泣かない。じゃあこうしよう、お互い、欲しいものを与え合おう。さぁ、凪くんからいいよ。」
初めて話した時もこうしてくれた。専務はいつも俺の事を気にかけてくれていた。
ジーンとして、べしょべしょになった顔を拭いながらお願いした。
「......キス、したい...です」
「ふふ、 奇遇だね。私も同じ望みだ。ね、解ったかい、私達はずっと同じ気持ちだ。これからは不安に思ったら私に正直に聞いてごらん。いいね?」
嬉しくて嬉しくて、その胸に手を添えて背伸びで恭司にキスをした。
そしたら恭司が背に手を添えて、ゆっくり屈んでくれた。途端に踵が床に着いて思う。
ほら、いつもこうして恭司は俺を気をかけてくれている。その心を惜しみ無く与えてくれてる。
目を薄く開けて見ると、恭司の目は閉じられていた。少しそのまま眺めて、また瞳を閉じた。
唇が離れて恭司と目があうと
「......どうしてほしいですか?」
今度は俺の番。次は自ら恭司に与えたい。
凪はそう思った。
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