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槇野への恐怖心からか、ファイルのデータ入力作業は効率よく進んでいる。恭司と同じ空間で作業をすると良からぬ妄想を掻き立てられるので秘書室でやりたい旨を伝えると、それが良いかもね、目の前にいて触れられないのは私も辛い。と何とも言えないセリフを言われ、盛大に赤面した。
秘書室に着くと定時を大幅に過ぎて居た事もあり槇野の姿が見えず、おそらく退社したのだろうとホッとした。自分のデスクに着くと、扉が開き人が入って来たので振り返り、挨拶しようと思ったが固まった。
「 ......お疲れ様です。」
「 ......お、お疲れ様ですぅ、」
入室してきたのは橘で、彼方も凪をみて赤面して目を逸らした。お互い気まずい気持ちで挨拶を交わすも、凪に至っては声も上擦っている。
....やっば、忘れてた。超恥ずかしいんですけどっ!!
橘はそそくさと自分のデスクへ行き、PCの電源を落とすとお先に失礼しますと踵を返す。その間も一切目は合わなかった。
明日からどうしよう。この秘書室で唯一の味方を失ったなと殊更思い、灰になりそうだった。
その後黙々と仕事に取り組む事数時間、時刻はもう直ぐ23時になろうとしてる。
「シャアッ!!終わったぁぁ!!」
ああ、良かった。これなら電車で帰れる。うぃー疲れた、腹へったぁ〜!
カチャリ
「んんー!! 疲れたぁー!!」
座ったまま両手をあげて椅子の背凭れごと大きく仰け反ると、視界に逆さまの恭司が映った。
「終わったかな?一緒に帰えろうか。」
にっこり笑う恭司の顔を見て、ジーンとする。ちょっと会わなかっただけだけど、恋しかった。
はいと返事をして帰り支度をすると並んで秘書室を後にした。
重役エレベーターの前で二人で並んで立つと、凪の顔が曇る。さっきの今だ。このエレベーターは気まずい。 そんな凪に気付いて恭司はスッと手を繋いだ。
「もう、気にしなくて大丈夫。」
凪のこういった小さな変化を見逃さないで、不安を拭ってあげたい。恭司はそう思っていた。
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