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料亭の中に入ると、和服姿の方に田邊社長が既に到着している事を聞き、緊張感が高まる。ちょっと手汗とかかいちゃってて、どんだけだよって思う。
「そんなに緊張しなくても、普段の君のままで平気だよ。...ああ、勿論会社でのね。」
そう軽く微笑む恭司の気遣いに嬉しくなりキュンキュンする。破顔しそうになる顔を引き締めるのに必死だ。
「失礼致します。高嶺様、お着きに為りました。」
料亭の方が恭しく平伏する横をすり抜け障子戸の中に入ると、40代くらいの割りと凛々しめの男性と、自分より少し年上であろう、落ち着いた感じの女性がいた。
「遅く為りまして申し訳ありません。本日は御時間を頂き有難う御座います。」
丁寧に挨拶する恭司に倣い、同じ様に頭を下げる凪を田邊は一瞥し、恭司に言葉を返す。
「いや、出先から直行で来たもので、早く着いてしまったんだよ。さぁさぁ、始めましょう。」
その言葉に凪が頭を上げると、バチンっと田邊と目があった。一瞬、鋭い眼差しで品定めでもされた気がしたが、直ぐに視線が逸らされたので気のせいかと思い直す。
「それで、此方の方は?」
「これは失礼致しました。私の秘書の相原です。凪くん、田邊社長にご挨拶を。」
「ご挨拶が遅れまして申し訳御座いません。高嶺の秘書をしております、相原と申します。宜しくお願い致します。」
恭司に促され、田邊に挨拶をした凪は緊張しながら名刺を差し出したが内心は浮かれてもいた。
初めて名刺使った〜!社会人っぽーい!
「相原くん、ね。これからも度々会うだろうから宜しく頼むね。こっちは私の秘書の里中だ。」
物腰は柔らかいけど、田邊のその眼差しの強さに少々、たじろぎながらも凪は両者と挨拶を交わし、席に着こうとしたら、「里中」と田邊の鶴の一声で里中が凪の席の筈だった場所へ移動する。
「さあ、君はこちらへ座りなさい」と田邊に腕を引かれ、内心わちゃわちゃして恭司を見るも、何も言ってこない。里中が恭司にお酌をするのを見て、もう仕方がないかと諦めて凪は田邊の隣に腰を下ろした。
「あの、申し訳御座いません、私はお酒は...、」
田邊に酌をしたら返盃され、言葉を濁しながらもやんわり断る。
「飲めないのか?」
「はい、とても弱いので、」
「一杯だけ付き合ってくれないか?高嶺専務の秘書じゃ、これからも接待や付き合いもあるだろうし、その度断るんじゃ大変だ。無礼講だと思ってさぁ一杯。」
ここまで言われて断るのもどうなんだろう。失礼にあたるのかなと、迷って恭司を見やるも里中と何やら話し込んでいて目も合わない。
...飲まない約束だし、どうしよう、
「なんだ、酒の一杯も上司の許しがないと飲めないのか?」
「あ、いえ、そんな事は。...では、一杯だけ頂戴致します、」
もう仕方無いと、返された杯にチビチビと口を付けたものの、一杯だけと言ったのに、田邊は酒が減る度継ぎ足していく。本当にもうとやんわり断るも、さぁさぁと酒を干すせと促される度に少しずつ入れていっていて、自分がどれくらい飲んでいるのかの見当が付かなかった。
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