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地下駐車場に着いた後、車庫入れは恭司にやってもらった。左ハンドルの車の感覚が全く掴めなかったし、ここは一般社員は入らないからもう良いだろうと。
エレベーターで39階に到着し、凪は秘書室へ、恭司は専務室へと各々別れる。去り際、周りをキョロキョロ、誰も居ないのを確認して小さく手を振るとなんか破顔しそうだった。
秘書室に入ると橘が既に出社して居り、凪の顔を見るなり驚いた表情で聞いてきた。
「.....相原さん、どうなさったんですかそのお顔、」
橘に言われ、ああと凪は湿布を手で押える。一昨日田邊に殴られた頬が痣になっているので、湿布を貼っているのだが、口元まで貼る訳にもいかず少し痣が見えちゃってるし、顔に湿布は目立つ。
「ちょっと、ぶつけちゃって。」
本当の事なんて言える訳もなく、苦しい言い訳をして濁したら橘は「痛そうですね、お大事になさって下さい」と相変わらず女神だ。
自分のデスクに向かうと、その上に大量のファイルが置いてあって思わずでっかい溜め息を吐く。
...何これ、デジャヴ?凄い見覚えのある光景なんだけど。
自分のデスクをファイルの山にしたのは恐らく、と言うか絶対に槇野だろうとキョロキョロとその姿を探す。するとそれに気付いた橘が、
「あの、槇野さん、今日生休なんです。あっ!?」
何じゃそりゃと知らない単語に、言ってから、しまったという顔をした橘に思い切って聞いてみる。
「......せいきゅう、って何ですか?」
「あ、あの、......生理休暇の事です。女性職員は月に1日使って良い事になっていて...、有給扱いなんです。」
困ったように少し顔を赤らめながら言う橘にそうなんですか。と返し、生理なら休んでくれて構わん。絶対にイライラしてるだろうからと、自分の姉がそうだから内心思う。でもふと疑問が沸く。
じゃあこのファイルは誰がって。
ファイルを訝しげに見ていると、これ、と橘が槇野から預かったという伝言メモを渡された。
【 本日、勝手ながらお休みを頂きます。就きましては、デスク上のファイルの入力を本日中にお願い致します。昨日、専務は出社されませんでしたので確認出来ておりませんが、本日は社長と終日外出の予定ですので恐らく平気だと思います。尚、管理上の問題で常務室にある私のPCからデータベースに入って行って下さい。分からない事やPCのパスワードは常務に伺って下さい。槇野】
くっそー、シャロン・ストーン異槇野めっ!
またファイルの入力かよ!大体、常務秘書の槇野さんがなんで恭司さんの予定知ってんだよ!俺、知らなかったし!しかも本日中に波線引くんじゃねー!!!
ジト目でメモを見て、溜め息を吐く。メモに愚痴っても無駄だ。槇野が居たって言えやしないし、諦めて取り掛かろうと思ったら内線が鳴り、番号を見ると専務室だ。
「相原です」
『 私だけど、これから社長と外出するから。終日になるみたいだから、終わったら真っ直ぐ家に帰りなさい。いいね?』
「畏まりました。何かご用意するものは御座いますか?」
『そうだね、強いて言えば、行ってらっしゃいのキスかな。 ...ふふ、冗談だよ。』
微笑み王子め。ドキッとしちゃったじゃん。
『凪、帰って居なかったら淋しいから、兎に角真っ直ぐ家に帰るんだよ。じゃあ家でね。』
「はい。行ってらっしゃいませ。」
内線を切ってから恭司の言葉に嬉しさを噛み締める。俄然ヤル気が出た。デスクの上のファイルを見て、とっととコレを片付けて絶対に恭司より先に帰ってお帰りなさいと出迎えよう。
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