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6.お前のせいだ!
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ガチャ
「こんにちは〜先輩」
「…………」
「いやいや道が混んでて思いの外遅くなっちゃいましたあそこの道いい加減もうちょっと広くしろって感じですよね、規制とかも緩いし思いませんか?」
「…………」
「はぁ〜、先輩ところで何でソファに寝転がって寝てるんですか駄目ですよ病人はベッドの上でちゃんと寝ないと俺が連れて行きましょうか?」
「…………」
「とりあえずザッと医薬品を袋一つ分ほど買っておきました、それから先輩どうせ家事しないだろうから冷蔵庫に何もないと思ってトマトとかキャベツとかビタミン豊富な物を買ってお」
「ーーてっっっっっっめぇは何平然とした顔で俺の前に現れてんだよ失せろこのホモ犯罪者」
「勝手にまな板借りますよ。先輩何食べたいですか?」
「ー無視すんなッ!!お前の作ったもんなんか食うか死ね!!!ゴミ箱に即放り込むわ!!」
「もー、先輩素直じゃないんだから」
「ーーあぁ……!!?てめ、マジで殺るぞ今すぐここでそのへらへらした顔殴り倒して首絞めんぞ!!」
「殺人ですか?それは歓迎できないなぁ、犯罪に手を染める先輩を、いくら先輩のことが好きな俺でも背中を押してあげるわけにはいきませんね」
「つい昨日強姦の犯罪起こしたやつが何偉ぶってやがるこのレイプ魔…!!」
「レイプ魔って…、別に一ヶ月の間に何人もの人無理矢理犯したり一週間監禁したり一日中ずっとノーマルの一般人捕まえて泣き喚かせたりなんて、しませんよ?そんなこと俺は」
「笑顔で綺麗に細々と言うなよお前は寒気が走ったわ今怖すぎて…!しねぇとか言う割にしてるようにしか聞こえないのは気のせいか俺だけかもしくはお前前科あるだろ!」
「ないですよ、あはは」
「ーその笑顔が絶対嘘だろ…!!」
「何言ってんですか、俺がそんな卑劣な男なわけないじゃないですか。こんなにあなたのことを想ってる一途な人は早々現れないと思いますよ?」
「一途だからって何でもしていいと思ってんのか人の手首縛ってのしかかっていいと思ってんのか!」
「だって、好きですってただ言っても先輩、絶対次から俺のこと警戒しまくりで拒否してくると思うし」
「当たり前だろこの野郎……!」
「だったら無理矢理にでも押し倒して奪うしかないって思って昨日あんなことしちゃったんです」
「しちゃったんですじゃねぇよ……俺のことホモの受けにしやがっ」
「でも、まさか次の日に体調崩してしかも熱出すなんて思わなかったな。先輩結構丈夫そうなのに案外体、あぁいや、精神面弱いんですね」
「ー人のこと無視してあげく笑いながらグサグサ貶めてくんじゃねぇよやっぱお前ドSだろ…!!」
「そういうふうに顔引きつらせて恐怖してドSとか言われたら思わず緊縛プレイでもしたくなりますね」
「、こ、の野郎……上司に向かってなんだその言葉は……、ーセクハラで訴えるぞコラ……!」
「俺は昨日の先輩のパワハラを訴えます」
「じゃあ俺は加えて昨日お前に強姦されたことも訴える!!」
「へぇ〜そうですか、訴えるんですか。男にヤられましたしかも自分より下の男にヤられたんです助けてください起訴してくださいって?」
「…っ、なんだよっ!」
「そんな33にもなって26の若い男に掘られたって言われても弁護士の方も信用しないと思うけどなぁ」
「それは、…しょ、証言してっ」
「ー証言?ほう、何をですか?まさか、裁判所で俺にキスされたところから挿入されたところまで細々と丁寧に裁判官の方にも傍聴席の見ず知らずの人にまで隅々自分のレイプ体験を説明すると」
「…そ、…そうだっ、」
「証拠は?」
「は?」
「俺にヤられたその証拠品は?何かあるんですか?」
「証拠品…なんて、…別に」
「じゃあ俺のパワハラで訴えるが勝りますね」
「何でだよ…!」
「俺は録音機で先輩の上司の立場を使って後輩の俺に必要以上の時間愚痴を話してたことをしっかり始めから録音してあります」
「用意周到かっ!!」
「ありがとうございますよく周りから言われます」
「謙遜の言葉を少しは覚えろ馬鹿…!!」
「先輩ところでそんなに怒鳴ってて大丈夫ですか。病人なんですから静かに寝てて下さい」
「残念ながら真昼間に昨日俺のケツの穴掘った後輩が不法侵入してきたから落ち着いてうかうか寝てられないな」
「見かけによらず神経質なんですね」
「ーそうじゃねぇだろ…!…てゆうか今言いながら気づいたけど、…お前会社は!?今日平日だぞ、何普通に俺の家入ってキッチンで料理始めて…てゆうか何で俺の家入れてんだよ…!?」
「今更ですか、随分時差があるようで」
「答えろ馬鹿!」
「…別に、今日会社出社したら先輩休みって言うもんで、気になって部長に聞いたら風邪こじらせてるって言うしだったら俺が先輩の家行って看病しないといけないなと思って午後は無理言って抜かせてもらって、だからこうして先輩の家で料理を」
「どうしてそこで、“俺が看病しないといけないな”…て行き着くんだよおめぇは!!おかしいだろう!」
「だって先輩俺のせいで風邪こじらせたんでしょ?だったら診てあげないとなって思って」
「その配慮ができるなら最初から俺を襲うなよ……」
「家に入れたのは、ただ単にドアが開いてたからです」
「ーぅえ……っ!?マジかよ!!」
「先輩朝もしかして冷えピタか何か買いに家出ました?」
「えっ!何で分か…」
「今先輩のおでこに思い切り貼ってありますから」
「…あ、あぁそうか」
「それで先輩、袋一つ下げて帰って来た時にうっかりドアの鍵し忘れたんでしょう?帰ったらグラグラして、頭がぼうっとして上手く機能してなくてそれでそのまま家入ってとりあえず冷えピタ貼って寝室に行くのが面倒ですぐそばにあるソファに身を倒した、と」
「……何で分かるんだよ…お前まさか、この家に盗撮の小型カメラを…!?そして今朝、俺の後ろを付いてストーカー行為を…っ!?」
「してませんしてません。普通に考えたらすぐ分かることです」
「俺には絶対わかんねぇぞそんなこと」
「でしょうね」
「おい」
「ま、俺は他人より何倍もそういう人の行動とか心理的なものの洞察力には長けてますから」
「へぇ。自分からそんなこと言われても別に褒めないけどな」
「別に良いですよ。それに」
「まだあんのか」
「あなたのことなら、日頃から常に見ているのでそれくらいのこと俺にはすぐに分かります」
「へ〜こえぇ〜、じゃ、俺の朝食べたご飯分かるのかよ」
「それは俺の見えない時のあなたの話ですよね」
「読めんだろ〜長けてんだろー?」
「……良いでしょう。答えましょう?ずばりあなたの今日の朝食は、食べてない、です」
「、…そんなわけ、ないだろが馬鹿」
「嘘ですね、食べてませんね」
「何でわかんだよ…っ!!」
「だってあなたは今日病人ですし、それほど朝から食欲はなかったと思うんですよ」
「は…、それだけで」
「それだけじゃありませんね。昨日ここに入って来た時のままの形で流しに食器が置いてある、ゴミ箱にも昨日と全く同じようにカップ麺が散乱して新たに何かを捨てた様子はない、つまりあなたは食べてない」
「ちょ、…ちょっと待て、何お前は昨日の間でそんなに色々見てんだよ覚えてんだよ!」
「先輩が離婚してこの家でどんな暮らしをしているのかと興味があったのでザッと家に上がった時に目を通しただけです、それに俺記憶力は良い方なので」
「、知らねぇぞそんな目で俺の家を探って見てただなんて…っ!セクハラだ!!」
「セクハラなんですかそれ」
「あったりまえだろ人の私生活覗き見やがってっ!!」
「何言ってるんですか昨日一緒に俺と一線を越えた仲なのにそんな小さなこと」
「ーその口いっぺんへし折るぞ…!」
「はいはいそこら辺で落ち着いて下さい先輩。料理できましたからね、そっちに持っていきますからね」
「ー来るなよ犯罪者…!!しかも食うかよお前のなんか…!」
「はい、静かにしてください。サラダも一応作ったんですがお粥のが良いですか?」
「いらない…っ!どっちもいらない!」
「そんなこと言って、何も食べない気ですか?ほら、スプーンで掬ってあげましたから口を開け…」
「ーいらねぇっつってんだろ…… !!!」
バシ…ッ
「…………」
「……ぁ……」
「……」
「いや…違……今のは、ワザとじゃ、」
「…何焦ってるんですか」
「…えっ…、いや…、」
「……あなたが焦る必要ないんですよ。悪いのは全部俺なんですから」
「……べ、…別に、…俺は、」
「もっと冷たくあたって良いんですよ。もっと軽蔑してこんな軽いのじゃなくて思い切り俺のこと気にせず殴って良いんですよ」
「…っ、し、知ってるよ馬鹿…っ、そんなこと、お前なんか、許してなんか、これっぽっちも、ねぇっつーの…っ!、」
「そうですか」
「なのに平然と…、俺の家に来るなよ…っ、勝手にメシなんか作って、余計なお世話だっつーの…っ!」
「じゃあ勝手に捨てといて下さい」
「ー、…え?」
「食べないなら、捨てといて下さい。そのまま置いてても、腐らせるだけでしょう」
「…、…そん、なの…お前が捨てろよ…!!…勝手に作ったんなら、捨てるのも勝手にお前がしろよ!」
「…せめて捨てるくらいでもあなたがしてくださいよ」
「はぁ…っ!?、」
「あなたの手で捨てられるくらいなら、俺はそれでもいい…許せる」
「…な、」
「でも自分の手で捨てるなんて、…そんなことできない、そんなこと、できない、自分が哀れすぎて、惨めすぎて、…そんなこと」
「……枷」
「…俺はもう帰るんで、片付けお願いします」
「ーな…、ちょ…、は…っ?!ま、待てよ枷…、」
「それと、薬ちゃんと飲むんですよ、あと戸締まりも。それから本当に部屋のベッドで寝てください、そんなところで寝たら治るものも治りませんよ、良いですね?」
「っ、…ぃや、待てよ、…枷っおい、」
「明日、元気になって出社してくださいね」
「ーおい、待てって…っ!、」
バタン
勝手に来て、勝手に去った後輩を見て、俺はそれから机の上にあるお粥とサラダに目を向けた。
容姿も良くて料理までできる後輩に少しムッとした。
こんなことされても、俺は騙されない、騙されない、騙されない……ー
昨日のことを思い出して、俺はお盆に乗ったそれらを持って、急に勢い良くズカズカと流しまで歩いて行って、三角コーナーの残飯の場所に、それらを、
「………っ…つ…、…」
捨てることなんて、
そんなこと、
できるはず
……なかった
「…、…なん、だよ…なんだよ…っ、」
お粥からまだ出る、その熱い蜃気楼を見つめ、俺はやるせない気持ちに拳を強く握り締めるのであった。
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