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変わる
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初めてアキラと繋がってから、半年が過ぎた。あれから、数えきれないほどに体を重ね、まるで自分の体が作り替えられたように思える。
アキラに触れられただけで、自分がぐずぐずと溶けてしまう。何も考えられなくなってしまう。
そんな自分の変化に戸惑い、恐怖すら覚えていたが、体を重ねる度に、嬉しそうな表情で『どんどんエロくなっていくな、リョウの体は』とアキラに言われると、これでいいのかと思ってしまう。
どうしようもないくらい、アキラに溺れてしまっていた。
*****
変化が現れ始めたのは、俺がバイトを新しく見つけてきた頃からだっただろうか。
バイトを始める、と伝えるとアキラの機嫌がみるみる悪くなった。俺が見つけてきたのは、大手チェーンの24時間営業の飲食店の厨房の調理補助の仕事。もちろん、二人の時間は大切にしたいから、週に1、2回で、シフトも講義の早く終わる日の昼から夕方までの時間だ。
人付き合いの苦手な俺ができるバイトは限られている。接客もしなくていいし、料理は苦手ではないし、条件的には最善に思えていた。
「なんで、前のバイトじゃダメなの」
いくら説明しても納得してくれそうにない。アキラのいう、前のバイトとは、俺の叔父のデザイン事務所の簡単な事務のことだ。俺の性格をよく把握している親が叔父に頼み込んだのだろう。時給も待遇も文句なしで、アキラの言い分はよく分かるが、大学生にもなって親のコネで働くなんてことは、絶対に嫌だったのだ。
「もう、決めたから。来週から行くよ」
アキラの許可が無くてもいいはずだ。
だんだん腹も立ってきて、それだけを言い放つと自分の部屋に引きこもった。
アキラ怒ってるよな。どうしよう。
親しい友人のいなかった俺は、喧嘩らしきものも今回が初めての経験で、どうすればいいのか全く見当もつかない。
生まれて初めての心を許せる友人であり、心の底から愛しく思う恋人でもあるアキラ。
そんなアキラを怒らせてまでバイトをする必要があるのかとさえ思う。でも、今更バイトを辞めるなんてそんな無責任なこともできない。
誰かに相談できたらいいのに。自分の経験値の少なさに、情けなくて涙がこぼれた。こんなときに、相談できる相手もいない。友人と呼べるのはアキラだけだ。本人のことを相談できるわけもなく。
悩んでいるうちに、夕食前だったはずがすっかり夜も更けていた。
そうっと、部屋を出る。シェアリング用のマンションのいいところは、共有スペースで孤独を感じずにすむこと、各部屋に鍵が付いてプライベートを確保できることだろう。
リビングを通り抜け、アキラの部屋の前に立つ。意を決してノックをしてみるが返事はない。
もう寝てるのかと思いながらも、ドアノブに手を伸ばしたが、鍵がかかっていた。アキラは今まで鍵をかけたことなんてなかった。
拒絶されたような、喪失感に打ちのめされる。自分が蒔いた種だというのに。
ふと、耳を澄ませるが部屋の中に人の気配がしない。そのまま玄関に向かうと、アキラの靴がなかった。
出掛けたのか。鍵が自分を拒絶するものではないとわかってほっとするが、どこに行ったのか、帰ってくるのか不安に襲われる。
『どこにいる?今日は嫌な言い方をして、ごめん。もう一度ゆっくりと話がしたい』
散々悩んでそれだけをメールする。
これで正解なのか、まるでわからない。
メールの返事をくれるだろうか。
今まで通りに笑ってくれるだろうか。
───長い、長い夜が始まった。
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