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浮かれる
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年が明け、冬の寒さも幾分和らいできた頃になっても、俺たちの状況に変わりはなかった。
アキラは、相変わらず、ずっと俺にくっついていたし、俺は俺で、アキラに流されるまま、この状況に酔いしれていた。
年末年始に3日間だけ、俺が実家に帰った時にも、ひっきりなしにメールが来て、その多さに少し違和感を覚えつつも、アキラを不安にさせているのが自分だと思うと暗い歓びに心が踊った。
今思えば、既に俺たちはいびつな関係になってしまっていたのだろう。
*****
「アキラ、今度さ、給料入るし、この前連れていってくれたイタリアンの店、飲みに行こうよ」
俺としては、デートのお誘いのつもりだったのだが。
アキラの表情が少しだけ曇る。
その表情を不安からくるものだと思い、安心させようと、言葉を重ねる。
「この前連れていってもらって、メシ美味しかったし。・・・どこに行ったって俺は、アキラしか見てないから大丈夫っ」
恥ずかしさから後半は早口になるが、アキラの耳にはちゃんと届いていたようだ。
「だよな、リョウってば、メロメロだもんなあ、オレに」
甘い甘い声で囁かれる。顔は見えないけど、きっとニヤニヤ笑っているのだろう。
そのまま甘い体の熱に負け、極限まで焦らされながら、お互いに求め合った───
*****
次の週末、二人で例のイタリアンバルに来ていた。
店内はかなり混雑していた。
あまり飲み会などにも参加したことはなく、こんな雰囲気は初めてで、人の多さに気持ち悪さを感じながらも、空気に飲まれたような、気分の高揚も感じていた。
アキラに注文を任せて、ボトルで頼んだ赤ワインをちびりちびりと飲む。
飲みやすいから、気を付けなければ。
アキラとこの前一緒に見た映画の話をしながら、アキラの注文したカルパッチョやピザなどを摘まむ。どれも、美味しかった。
二人で夜に出かけるのも初めてのことで、俺は、本当に浮かれていた。
普通の恋人のようになれた、と一人で浮かれていた。・・・一人で。
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