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「ごめんね、待たせちゃったね」
そう言って現れた朝比奈教授は、以前講義で見た時よりも、ずっと若く見えた。
髪も軽くセットして流していて、紺のニットとグレーのテーラードジャケットがよく似合っていた。
その上、コンタクトにしているのか以前はかけていた眼鏡をしておらず、がらりと印象を変えていた。
「そんな、全然待ってないです」
「そう?・・・じゃあ、行こうか」
にっこりと微笑まれると、その笑顔は変わらず、安心感を覚えどこに行くかもわからないままなのに、黙ってついていく。
歩き始めて10分ほどたっただろうか。
目の前に、黒っぽい外観のお洒落なマンションが見えてきた。目的地はここなのだろうか。まさか、教授の自宅なのか?
教授は、戸惑いを感じ始めた俺を気にも止めず、迷うことなくそのマンションに入っていく。
セキュリティのしっかりしたマンション内は、もちろん管理も行き届いているらしく、どこもかしこも綺麗だった。
最上階の一つ下のフロアでエレベーターが止まり、ゆったりとした動作で降りるように促される。
女性の上手なエスコートの見本はこんな感じかな、とその流れるような動作を見ながら思う。
フロアは、高級ホテルかと思うほどの内装で、床には柔らかな絨毯が敷き詰められている。
気後れしながらも、教授の足が止まることはないため、大人しくついていく。
「ちょっと散らかってるけど、どうぞ」
またもや見事なエスコートで、教授の自宅へと案内される。
玄関に入った途端に、室内の電気がパッと灯る。眩しさに目をチカチカさせていると、教授がクスッと笑った雰囲気がした。
正直、今の自分の状況を忘れるくらい、教授の部屋は広く、綺麗だった。
全く散らかってなどいない。
リビングに通され、革張りのソファに恐る恐る座る。室内は白でほぼ統一されていて、ソファやテレビボードなど数点が深い茶色で揃えられ、白を引き立てていた。
ちょっと着替えてくるね、と教授がリビングを離れた隙に、ため息を吐く。
よく考えれば、まだ二回しか会ったことのない人の家に上がり込むなんて。
二人きりという状況に、自分が耐えられるのかも不安だった。
大勢で群れることも嫌いだが、密室に二人きりでいたことなんて、家族かアキラだけだ。
・・・アキラ。どうして、俺は、アキラとなら大抵のことは平気だったんだろう。
アキラとならずっと二人きりでいても、抱き合っていても気持ちよさしかなく、不快感なんて感じたことはなかった。
アキラのことを考えると、感情が溢れそうになる。
思わず滲みそうな涙を堪えていると、ラフな格好に着替えた教授が、ワインとグラス2つを持って現れた。
眼鏡をかけたその格好に、密かに安心する。
「貰い物なんだけど、飲めるよね?」
強くはないけど、一応頷いておく。
「色々、聞きたそうな顔してるね。まあ、簡単に言ってしまえば、ここは親から生前分与で譲り受けただけだよ。給料でここが買えるほど、僕はもらってないからね」
悪戯っぽい顔で笑われる。
「ここに連れてきた人間には、皆にそんな顔されるんだよ。大学教授ってそんなに儲かるのかってね」
あと聞きたいのは、眼鏡のことくらいかな?と、更に心を読まれ、驚くしかない。心理学って、読心術も学ぶのだろうか。
「プライベートではコンタクトにしてるんだよ。別にたいした理由はないけどね」
教授にワインを差し出され、素直に受けとる。
「僕の話はこれくらいにして、リョウ君の話をきかせてもらおうかな」
本題に入られると、どうしていいか、わからなくなる。
それが目的でこの人に会っているのに。
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