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ため息
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ケイさんに、アキラが結婚すると聞かされた時だった。
アキラの子どもの頃の話を聞いたのは。
『やっぱり、ケイさんには色々話してたんですね、アキラは』
自分の声に、子どものような妬みが混じるのを浅ましく感じる。
アキラは、何も俺に話してくれなかった。それだけの存在だったということなんだろう。
『あいつ、カッコつけの見栄っ張りだからさ。リョウ君には自分の弱いとこ見せたくなかったんだと思うよ?』
宥めるように言うケイさんの言葉も、俺の心を通りすぎていく。
やっぱり、俺じゃ駄目だったんだな。
改めて、そう感じさせられて、アキラが家族に憧れを抱いてると感じた自分が正しかったのだと思い知る。
あの時に、別れを選んで正解だったんだ。
家族にもなれない、弱味も見せられない俺なんかじゃ、アキラを幸せになんか出来っこない。
『アキラに、幸せにって、伝えてください』
結婚相手と幸せになってほしい。
おめでとう、とは言えないけれど。
───まだ、アキラへの想いを傷が癒えていないだけと、思い込んでいた俺は、そう、ケイさんに伝えた。
───その時は、それが紛れもなく自分の本心だったのだ。
*****
「リョウ君、最近充実してるみたいだね」
少し拗ねたような先生の表情に、思わずため息が漏れそうになる。
また、この人は。
「そうですね、先生のおかげで充実した仕事をすることが出来ていますね」
「そう、僕のおかげでね。それなのに最近は、僕が誘っても全然付き合ってくれてないけどね」
やっぱり。拗ねている。
自分だって若い恋人ができて、俺に構ってる暇はないはずなのに、自分が構われないのは嫌らしい。
再び大きなため息を我慢する。
ここでため息でもつこうものなら、この中身が子どもの先生が、さらに拗ねてややこしいことになるのは目に見えている。
「そんなに誘っていただいたとは思っていませんでしたが」
「誘おうと思ったら、さっさと帰っちゃってるんだよ、君が!」
ますます機嫌を損ねてしまったようだ。
シュン君も苦労してるだろうな。
「先生、ちなみに今晩のご予定は?」
こういう時は、こちらから誘わなければずっと拗れたままになるだろう。
「特にないけど?」
「では、俺とご飯でもいかがですか?」
先生は、仕方ないなぁ、付き合ってあげるよと、上から目線でのたまい、ようやく機嫌がなおった様だった。
本当に今月は財布の中身がやばい。
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