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交換条件
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「つまりは第一印象が肝心なんだよ」
わかった?とでも言うようにビシッと立てた人差し指を向けられる。
「……はぁ」
「さっきからそれしか聞いてないんだけど。君、僕の話ちゃんと聞いてる?」
正直、半分もちゃんと聞いてない。
するとまたくどくどと説教が始まった。
先程からそれがエンドレスで続いているのだが、こいつは飽きないんだろうか。
「だーかーらー
友達、欲しくないの?」
「なんでそんなことお前に言われなきゃなんないんだよ、いらねーつってんだろ。
…顔近ぇ」
「いたた」
ずいっと近付けてくる顔を片手で押し戻す。
「僕も協力するって言ってんのに、なにが気に入らないの?」
「…全部だよ」
思わずため息が漏れる。
食べかけだった焼きそばパンに手を伸ばせば、俺が取る前に目の前の奴に横取りされた。
「なにすんだよ」
「君さあ、ほんと"変わんない"ね。
…もう少し自分の気持ちに素直にならないと、大切なもの見失うよ?」
それだけ言うと奪った焼きそばパンをひょいと投げて俺に寄越した。
「……どういうことだよ?」
俺は言われた意味がわからず困惑の表情を浮かべる。
──が、教えてくれる気配はまったくない。そいつは薄ら笑いを浮かべたまま静かに俺を見つめるだけだった。
「…わからないなら、考えなきゃ」
と言われたが、特にこれといって思い当たる節もなくますます疑問が深まるばかりで前進しなかった。
しばらくその様子を見ていたそいつがおもむろに口を開いた。
「交換条件をしようか」
「……え?」
思いがけない言葉に再びハテナが頭上を飛んだ。
「3日間だけ猶予をあげる。その間に僕の与えた問いかけにちゃんと答えられたら、君の言う事をなんでも一つ聞いてあげるよ。
簡単でしょ?」
「あ、ああ……」
まだいまいち話の流れについていけていない感はあるが、とりあえず今言われたことは理解した。
「これから3日間の間に俺がお前の問いに答えられればいいんだよな?」
「うん。そうだよ」
「なんでも、って……本当になんでもいいのか?」
「しつこいなあ、何度も言わせないでよ。君が望むなら、こうして君に会いに来るのもやめてあげるし近付くなって言うなら今後一切近付かないよ。
で、やるの?やらないの?」
提示された条件を前に見返りとこれからの俺の負担を考え天秤にかける。
──が、考えるまでもなく俺の心はすでに決まっていた。
「……はぁ…。
わかった、やるよ」
こいつの思い通りに事が運んだようでなんだか癪だった。
半ば投げやりにその言葉を吐き出せば「よし、交渉成立」と言ってそいつが立ち上がった。
食べ終えたゴミをまとめ、上機嫌で帰っていく背中を見送る。
不意に扉の前で急に足を止めたもんだから、不思議に思って首を傾げていると無表情のまま「ああ、そうだ」と切り出された。
「言い忘れてたけど、3日以内に君が答えられなかったら逆に僕の言う事をなんでも一つ聞いてもらうから。
…せいぜい足掻けよ」
……甘かった
それだけ言うと絶望する俺を残して隣の教室へと姿を消した。
どちらを選ぶにせよ、俺は覚悟を決め腹を括るしかなかった。
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