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今の間に知ったこと。
家は駅から電車に乗って4つ目。
父母を事故で亡くし、祖母と7つ下の妹と三人暮らし。
生まれた時から体はあまり強くなくて心臓に欠陥があるらしい。
好きなものは動物と花で
嫌いなものは特になし。
趣味は俺を弄ること。
3月16日生まれの魚座。
血液型はB型。
「──好きなタイプ、自分の思い通りにならない人」
「いや、そこまで聞いてない」
目も腹の調子もだいぶ良くなってようやく支えなしでも歩けるようになった。
質問の許可も出たわけだし、せっかくだからと思いつくことを聞いてみた。
最後の方はあいつがべらべらと喋って教えてくれただけなんだけど。
思い切って一番疑問に思っていたことを聞いてみた。
「もう一つ聞きたいんだけどさ、なんで俺なわけ?」
「なんで、って?」
「や、だってさ、お互いになんの接点もないのに…俺の噂だって知ってた筈だろ? お前なら友達だって他にいるだろうし、周りにはかわいい女の子だってたくさんいるだろ。
なのに、なんで俺なんだよ?」
「……接点ならあったんだけどなぁ」
ぽつりと呟かれた言葉を聞き取れなくて「は?」と聞き返す。
「ううん、なんでもない。…てか、僕、別にあんなキャーキャー騒いでるだけの女の子に興味ないし。
友達もいないんだけど?」
「あっそ…。
いないのに俺に友達つくれとか言ってたのかよ。理不尽だろ」
「僕にはそんなの必要ないの。君と違って必要ないからつくらないだけなの」
屁理屈かよ
…だったら俺だって必要ねぇよ
自分が本当は友達が欲しいのを我慢してるような言い方に若干カチンときた。
「だってそうでしょ?」とくるりと反転してそいつは俺の前に立ち道を塞ぐ。
「…なにがだよ」
「君は嘘が下手だからね。どれだけ君の傍にいたと思ってるの、わからない筈がないでしょ」
「……………」
またも困惑。
嘘が下手ってなんだよ…
じゃあ、お前は俺のなにを知ってるって言うんだ
ガシガシと頭を引っ掻く。
聞けば聞くほどに解消していくどころか疑問が増える一方で余計にわからなくなる。
目の前に立っているこいつの実態は一体どこにあるんだろう?
頭を抱えていれば不意に「ねぇ」と呼びかけられた。
「ちょっと寄り道して帰らない?
君と行きたい場所があるんだ」
そう言った奴の表情はひどく穏やかだった。
差し出された右手に「もうどうにでもなれ」という思いで俺も自分の右手を伸ばす。
そいつは勢いよく手を取ると、「行こう」という声とともにグイと俺の腕を引っ張った。危うく転びそうになるのを踏ん張り、慌ててついて行く。
怒鳴ってやろうかと思ったが、子供のようにはしゃぐ後ろ姿を見ているとそんな気持ちもどこかへ消えてしまった。
緩んだ口もとを抑え、俺は大人しく連れて行かれることにした。
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