アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
思い出の場所
-
たどり着いたのは海岸沿いの公園だった。
面積が広い割には遊具は少なく、ブランコが2つと大中小と並んだ鉄棒があるだけ。
ど真ん中には公園全体を覆うほど大きな木が一本、どっしりとそびえ立っていて、その真下には二人がけのベンチが一脚ぽつんと置かれていた。
その外観に公園と呼ぶにはあまりに簡素な作りだな、と思った。
「ここ、住宅街から離れてるし遊具も人通りも少ないから、一人になりたい時はよく来るんだ」
「秘密基地みたいな感じか?」
「まあ、そうだね。
…ここ、君にしか教えてないんだから僕の許可なく他の人に教えたりするなよ。そんな度胸ないだろうけど」
「しねーよ…」
その後の仕打ちを考えれば、例え脅されたって吐かないだろう。
ほら、触らぬ神に祟りなし、って言うだろ?
…元から言う気なんてさらさらねーけどな
「でも、いくら人通りが少ないつっても、海が近いんだから海水浴に来る人もいるだろ」
「ん。ああ、ここの海ね、立入り禁止だよ。
昔、遊びに来ていた子供が何人も溺死したみたいだし、少し離れたところの崖から身投げする人も多かったみたいでさ。
規制線も張られて全然人が寄り付かなくなっちゃった」
にこにこと話すそいつに対して俺は終始苦い顔だった。
「悪趣味な…」
ボソッと呟いた。
ハッとして急いで口を塞ぐ。
余計なこと言った……
訪れた静寂に冷や汗を浮かべながら青い顔でその時を待つ。
しかし、一向になにを仕掛けてくる様子もなくそれが逆に恐ろしくて片手で口を覆ったまま横目でそろりと相手の様子を窺った。
絶対怒られる、と思って構えていたのに、俺の予想に反してそいつは目を見開いたまま固まっていた。口なんか半開きだ。
今までにない反応にビクッと体が揺れた。
反射的に後退ればシャツの裾をくっ、と引かれた。
「わ、悪かったよ。思わず口から出ただけで……そこまで本気で思ってねーって。
だから、そんな怒んなくても」
「…………もっかい…………」
「……え、」
とりあえず思いつく限りの言い訳を並べていると、これでもかと言うほど顔を近づけたそいつがいた。
手は相変わらず俺のシャツの裾を握ったままだ。
「…な、なに……」
「今の……もう一回、言って」
「え、あ…わ、悪かった……?」
「違う。その前」
そ、その前……?
そう言ってさらに距離を縮めてくる。
お互いの鼻と鼻が触れてしまいそうな距離に息が詰まった。
じっと見つめてくる瞳に吸い込まれそうになる。
「え…と……、あ、悪趣味…な………」
最後の方なんか聞き取れたかどうかも怪しいほど小さな声だった。
なんでこんなことを二度も言わないといけないんだ
もう死亡フラグ立ってんだろ、これ
言ってしまった以上撤回もできないし、したら多分、倍返しになって返ってくるだろうから俺は大人しく目を瞑った。
「──ふっ…、ははっ」
──ん?
「な、なんだよ…」
「い、いや…っ、なんでも…ふはっ。
やっぱ、どれだけ経っても変わんないよ、君は」
「はぁ?」
なんだか拍子抜けだ。
で、なんでこいつは笑ってるんだ。わけがわからん。
しばらく笑い転げるそいつに呆気にとられ目を白黒させていると少し収まったところで再び口を開いた。
「覚えてない?
僕ね、前に君と会ってるんだよ。ここで」
「──は?」
今度は俺が固まる番だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 291