アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ー 2
-
「ち、ちょっと待てよ。俺とお前が?
いつ?」
あわあわとうろたえる俺とは対照的にそいつはやけに落ち着いていて、静かに俺を見据えていた。
思い返してみれば、こいつとは時々、会話が噛み合わないことがあった。
すぐに「なんでもないよ」と言ってはぐらかすから、俺も身に覚えがないしさして気にすることもなかったけど…。
胸のあたりがざわつく。
──もしかして、今までの違和感もこいつなりのメッセージだったのか…?
だとしたら、こいつは俺に"なに"を望んでる
"なに"を訴え、"なに"に気付いて欲しいんだ
「…お前は一体俺のなんなんだ…?」
強い風が潮の香りを纏って吹き荒れた。
それによって枝から離れた木の葉が何枚も宙を舞う。
風の強さに身動げば、シャツが引っ張られるような感覚に閉じた瞼をわずかに持ち上げた。
──そういえば、まだ握ったままだったのか
「…なぁ、いつまで引っ張んの?」
「……………」
「……………」
完全に目を開くとそいつは力なく俯いていた。
表情が見えない分、感情が読み取れない。
別にすっげー嫌なわけじゃねえけど、いつもと違う反応されるとこっちが戸惑う…
「……なぁ、おいってば…」
肩に手を置き軽く揺さぶった。
頭が持ち上がり、お互いの視線が重なる。
──あ…まただ…
こいつの目を見ていると視界が歪む
頭が鈍器で殴られたような感覚に陥る
まるでこいつに酔っているかのように、
目の前がくらくらする──
ドクドクと心臓の音がやけにうるさく鳴り響いた。
脳内にノイズが流れる。
──なんだこれ…
様々な景色が脳裏を過ぎ去っていく。
見たことのある場所、人。
逆に見たことのない場所、人…。
どれもこれも身に覚えがない。
だけど、なぜかひどく懐かしい──。
これは一体、誰の記憶…?
「……真面目に答えて…
君は僕のこと、どう思ってるの…?」
「──そ…ん、なの……」
"お前なんて大嫌いだよ"
そう思っていた。今まで…。
今でもきっと変わらない。その筈なのに。
──嫌いじゃない……のか……?
結局、たったそれだけの事を言葉にできなかった。
交わった視線の先で物寂しげな瞳が微かに揺れた気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 291