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どうしてこんなことになってるんだろう…
回転の悪い頭でどうにか現状を把握しようと必死に考える。
ほんの数分前までは普段通りな筈だったんだ──…
ホームルームの途中だったけど、友達の帆奏(ホノカ)が急に委員会の用事が入ったからって先生に連れられて行った。
本人も「すぐ済むと思うから」って言ってたし私も終わるまで待つつもりでいたから、ホームルームが終わっても教室に残ってた。続々と帰り支度を整えて教室を後にするクラスメイトを見つめながら時間が過ぎるのを待った。
早く終わんないかなぁー…
小さくはぁ、とため息をつく。
そこに噂のあの人はやって来た。
黒いもさもさした髪
180cmくらいの高い身長
目の下の隈と睨むような目つき
瞬間的に悟った。
隣のクラスの怖い人だと。
視線を上げるとカッターシャツの中からのぞくTシャツが目に入った。赤地に黒い字でなぜか『煩悩』と書かれていた。
この人──絶対、変だ…。
噂だけは一年生の時から聞いていた。
中には突拍子もない噂もあって本当なのか、って半信半疑だった。それも実物を目の前にして全部吹き飛んだけど。
とにかく怖くて全身の震えが止まらなくて、教室に残っていた数人も怖いのか助けてくれないし、正直もう死ぬのかと思った。
だけど、よくよく話を聞いてみるとどうもこの人は"しおねくん"を捜していただけらしい。名前を知らなかったのか一生懸命特徴を説明してくれた。
終始おろおろして睨んでる筈の目はでもどこか優しくて、そんな様子を見ているとなんだ、普通の人じゃないか、と思った。
『隣のクラスにしおねを脅してる奴がいるんだって。
そうそう、あの目つきの悪い奴な』
いつか男の子たちがそう話していたのを思い出す。
──本当に?
じゃあなんでしおねくんは毎日毎日あの人のところへ行くの?
──あの人といる時のしおねくんの顔、見たことある?
すごく幸せそうに笑うんだよ。
──本当に、噂されてる人物像がその人のすべてなの?
「…こ、怖かったぁ~。春ちゃん、大丈夫だった?」
「え? う、うん……」
「あの人でしょ? ほら、例の噂の。ほんと、噂通り目つき悪ぅ…。陰じゃあ"ボス"とかって呼ばれてるらしいじゃん?
春、気を付けなよ」
「……うん、そうだね…」
俯いて小さくなっていくその背中を見つめながら、私は流されるがままに適当に相槌を打った。
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