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第三者の視点
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「嘘つき」
「ノーカンだ」
「俺はちゃんと答えただろ」
「相思相愛ってことで、ドローでいいじゃん」
「…嫌いだ」
「好きなくせに」
「……………」
繰り広げられる静かな闘いに周りの人間は内心ヒヤヒヤしながらその光景を見守った。
約10分前からずっと、同じやり取りが繰り返されている。よくもまぁ飽きないな、と…。
今は昼休みで、オレは友達と教室の隅っこの方を陣取ってなるべくその二人から離れたところで傍観しているが、本当は今すぐにでも教室を出ていきたい気分だ。だけど、今席を立つと変に目立ってしまいそうなので、小心なオレはここで縮こまってるしかないわけだ。
弱き者の定めじゃないだろうか、是非そうだと言ってくれ…
まあ、賢い奴らは早々に弁当を持って退散し安全地帯へと逃げて行くが。
…愚図で臆病者ですけどなにか。
「あぁ…胃が痛い」
「大丈夫かよ、南。
そういやお前、あの菅野さんと席隣同士だもんな。そりゃー胃も痛くなるわ」
「……だろ?」
なにもしなければなにも害はないのだが、嘘か本当かもわからない突飛な噂が飛び交う中で菅野さんに好き好んで近付くような人はまずいない。女子も男子も、学年も関係なくみんな避けてる。
…だって怖いから。見た目なんてマジ半端ないから。あの目つきで見下ろされたらオレ、絶対漏らしてる。
だから、菅野さんに抵抗なく普通に話しかけてる相手ってのはものすごく貴重だ。それが隣のクラスの汐音なわけだ。
なんかキラキラしてて色気出まくりで、彼女にも困らなさそーな王子様タイプ──だと思ってた。
菅野さんと話してる雰囲気を見てると、それも上辺だけだったんだなーと改めて感じさせられた。ある意味、菅野さんよりも恐ろしいと思った。
「てかさ、菅野さんと汐音ってあんな仲良かったっけ?」
「んー…昨日までは確実に犬猿の仲、って感じじゃなかったか?」
「だよなあ。今はなんか、新婚夫婦って感じ?」
「あー、なんかわかる気がする。痴話喧嘩だよな、やり取りが」
「今朝もやってたぜ、あの二人」
「……長いな」
最早、恐怖を通り越して少し呆れた。
チラッと視線をそちらに向けると、二人とも座ったまま睨み合い火花を散らしていた。
……飽きないなぁ
ふぅっとため息を漏らし、オレはさらに小さくなった。
二人の視界に入らないよう、中断していたおにぎりをもそもそと食べ始めた。
明太子うめぇ。
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