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頼りの存在
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「うちのクラスは保育園ですか」
突然の登場で申し訳ない。しかし
今、目の前に座っているこの人をこれ以上放っておくことはできない。
そろそろ本気でお説教が必要だと感じたからだ。この人はあまりにも自由すぎる。
「ごめんてば〜。ちょっと最近調子に乗り過ぎてるなって…少しくらいは反省してたんだよ?」
「心にもないことを」
「ほんと、ほんとだって。
──い"たっ」
…うん、今のチョップはきれいに入った
「いたいなぁ、もう…そんな怒んないでよ、いいんちょー」
「うるさい。今一度、態度を改めなさい」
「あいたっ」
再度つむじめがけてチョップを落とした。
ビシッ!という音がぴったりなほどの感触が腕全体に響く。
「ていうか、イマドキ廊下で正座してお説教なんて聞いたことないんだけど。あたし今、すごい貴重な体験してんね」
これだけの制裁を加えてもなお、ヘラヘラと締まりのない人は瀬良。同じクラスの副委員長でかなり特殊な性癖の持ち主だ。
どんな変人だろうと、基本的に僕は僕自身に迷惑がかかりさえしなければどうだっていい。多少の負担がかかろうが、代わりに別の事で返してくれればそれで相殺だ。
だから、瀬良がなにをしようとほとんどのことには目を瞑ってきたつもりだ。用事があるからと重要な委員会を欠席しようが、仕事を押しつけられようが、その度に口を酸っぱくして怒るようなことはしなかった。…この人逃げるし。
仕方ない、って僕も了承してやってきたことだ。まあ、翌日には倍の仕事を用意してすべてこなしてもらったけれど。
まぁ、それはそれ。授業をサボるのはまた別問題だ。
「……だからと言ってなんでもしていいとは言ってませんから」
「ねぇ、今のあたしの話聞いてた? それはスルーなの?
あと、なんの前触れもなく真顔で話を切り出さないでよ。顔怖いから」
「即刻黙りなさい。また叩かれたいんですか?」
「えぇ〜…やだよ、それ。痛いじゃん」
スッと構えた腕に敏感に反応し、すでに受身の姿勢をとっている。
…叩かれる気満々じゃないか。逃げろよ。
「とにかく、今後、今日のように僕に無断で授業を欠席することのないように。いいですね?」
「…わかった。
じゃあ、今度サボりたくなった時はちゃんと委員長に言ってから出ていくわ」
「!? そういう問題じゃない!」
10分休憩の終了を知らせるチャイムの音に深いため息をついた。
ああ…僕の休憩時間が瀬良への説教で終わってしまった…
しかも、まともな説得もできずに
この自由人を型に嵌めようとする方が無駄な労力なのはわかっている。一応、やることはやっているわけだし。
文句はない。ただ、上手く言いくるめられたような気がして癪なだけだ。結局はどう足掻こうとこの人に敵う筈がないのだが。
だから、今日も僕は瀬良に従順な犬なのだ。
……むかつくけど。
「頼りにしてるよ、いいんちょー♥」
──本当、厄介だ。
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