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甘え
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「かお」
「ん、こっち」
あれから汐音とはなんだかんだで和解し、二人で平穏な昼休みを過ごしていた。汐音は相変わらず少食で、今日も小さな買い物袋を片手に提げて教室に顔をのぞかせた。
「…今日のおかずは?」
「肉と野菜炒めと惣菜」
「うわ、ざっくりだね…」
「あと、汐音の好きな玉子焼きたくさん作ってきた」
「……食べる」
変化があったとすれば汐音の態度。減らず口は変わらずだが、以前よりも甘えを見せてくれるようになった。
最近になってなんとなく感じていたのだが、クラスの雰囲気も少し柔らかくなったような気がする。
「…お前、またサンドイッチだけかよ」
「いいでしょ、別に。好きなんだから。
かおも一口食べる?」
「いらねえよ、そんなことしたらお前が食べる分が余計に少なくなるだろ。もっと食え」
「毎日が正月のような量の弁当を持って来てる君と一緒にしないでよ。まるでアメ車だよね」
「ああそうかよ。玉子焼きはいらねんだな」
「…それとこれとは話が別でしょ」
「一緒だっつの。ほら」
「…あー」
自然と玉子焼きをつまんだ箸の先が汐音に向きそれを口もとまで持っていく。
焦らすように出したり引っ込めたりを繰り返せば、ムキになって俺の腕ごと掴んで自身の口へと誘導し食いついた。睨むような目つきなのに美味しそうに口をもごもごと動かしているそいつがおもしろくて、もう一つ玉子焼きをつまみ上げ、同じように汐音のもとへと運んでいく。
「……なに」
「いや。美味しそうに食べるなって思って」
「人の顔見てなにがおもしろいんだか。…もういっこ」
そう言って口を開けて待つそこに玉子焼きを放り込んだ。
それで満足したらしく、サンドイッチの袋を開けもそもそと食べ始めた。玉子焼き計3個。数だけ見れば全然少ないが、今までに比べれば食べられただけでも大きな成長だった。
俺もそれ以上無理に汐音に食べさせることはせず、いると言われた分だけ口へと運ぶ。残りはいつも通り自分が食べるから毎日の弁当に残飯はない。
「かお」
「なんだよ?」
「…お腹いっぱい」
スッと1個の半分ほど残ったサンドイッチを差し出される。
一度手放したものに汐音がそれ以上執着しないのをわかっていたから、自分の弁当の残りと汐音の残したサンドイッチを平らげた。
…結局は食べる量なんてあんま変わってないんだよなあ
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