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家に帰り、日課にしているポストの中身を確認するといつかのように一輪の花が置いてあった。
「………あいつ、また…」
ため息をつくと同時に項垂れる。
しかし、いくらそうしていたところで先に進めるわけでもなく、仕方なく重い腰を上げて玄関を開けた。
明かり一つついてない家の中は薄暗く、カーテンの隙間から覗く月明かりだけが部屋をぼんやりと照らしている。
こういう時、電気をつけて一人「ただいま」を言うと、一人暮らしだということを余計に実感する。
「…さみぃな」
なんでだろう
前は同じ光景になんとも思わなかったくせに、何故だか心が寂しい
夏休みも迫ってきた6月末、まだまだ気候は夏だ。当然、"寒い"わけがない。
…わかってる
こうして普通に人恋しく感じられるようになったのはあいつ──汐音のおかげだ。
「今日一緒に帰らなかったからか…? いや、もっと前か。俺が瀬良と話をしたから……頼みを引き受けたから?
だから怒って………」
ブツブツと独り言を呟きながら押し入れの奥底にしまってあったノートパソコンを引っ張り出す。
あまり使う機会はなかったから少し埃を被っている。まさか花言葉を調べるのに使うことになるとは思わなかったが…。
「……これから役に立ちそうだな、こいつも」
深いため息を吐きながら電源を入れた。
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