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「帆奏おはようっ!」
「んー…おはよぉ」
春野の元気な挨拶とは対照的にいつもより気の抜けた返事を返す。
ちらっと汐音の席に目を向ければそこは相変わらず空席だった。
「今日も汐音くん来ないのかな」
「……………」
「怒ると怖いけど、やっぱりいないと少し寂しいね。体調悪いのかなあ?」
「…そうだね」
寂しいだなんて少しも思ってはいないけど春野に合わせて軽く頷く。
「あっ!そういえば、来週は期末テストだね」
「ほんとね〜嫌んなっちゃう…」
「帆奏、今回赤点とったら今度こそ夏休み補習確定でしょ?」
「定期テストで3回連続赤点だったら強制補習とか馬鹿げてんのよ。もう少し猶予を与えてくれてもいいと思わない?」
「他の人はそこまでひどい点数とらないから…。緩いけど、一応普通科の進学校なわけだし」
「高校生は勉強よりも大切なものをもっと学ぶべきだと思うけどね」
「ふふっ、帆奏らしいなあ。
でも、頑張って赤点だけは避けてね」
「……この毒舌め」
春野と他愛のない会話をしていると一時だけでもモヤモヤが晴れた気がして、ほんの少しだけ気が楽だった。
だけど、それもただの気休めでしかないことは重々にわかっている。
「でも、帆奏なら大丈夫だよ、なんてったって土壇場で力を発揮する人だもん!
放課後も勉強教えてもらってたって、委員長から聞いたよ。隣のクラスの菅野くんって人なんでしょ? すごいよね、私頭いいなんて全然知らなかったから──」
「あーっ、ごめん春野!委員会の用事あったの忘れてた。ちょっと行ってくんね」
「えっ? あ、うん…」
──今だってそう。
春野から菅野クンや汐音の話題が上ると意図的に避けてる。
「……嫌だなぁ、ほんと」
いつになったらこの苦しみから解放されるんだろう…?
ふぅっと息を吐き出すと、あたしは前を向いたまま背後に立つその人に声をかけた。
「答えは出た? 菅野クン」
「……ああ」
あたしも少しは菅野クンみたいに純粋に真っ直ぐ前を向いて歩めるような人間になれるのかな
そうなれればいいな、と
自嘲の笑みをこぼした。
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