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噂をすれば
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瀬良と名乗るその人は『汐音』と同じクラスだと言う。
当の本人は病気がちで入退院を繰り返し、今はまだ療養中だとか。
学校に来ても授業はサボるばかりで、持病のこともあってか周りはそのことについて責めることもできず委員長は手を焼いているんだとか。
おまけに愛想は悪いわ口は悪いわで散々なようで。
話を聞く限りでは良いところなんて一つも見当たらないが、見た目は俗に言う王子様みたいな人らしく、言い寄ってくる女子達は多いそうな。全員玉砕してるらしいけど。
「一体そんな奴のどこがいいんだ?」
「さてね。あたしは興味ないからさっぱり。
よっくわかんない奴でしょ?」
「そうだな…」
やっぱり、その『汐音』って人となにかあったような気がする、なんて…思い過ごしなんじゃないだろうか
まず以て接点がどこにもないだろ
クラスが違うのならなおさら
考えれば考えるほど泥沼に嵌っていくように感じ、余計にわからなくなってズルズルと壁にもたれた。
「…あれっ、噂をすれば」
「え…?」
瀬良の一言に後ろを振り返ると、自分と同じくらいの身長の男が立っていた。
自分と違うのは、肌も髪の色も驚くほど白くて線が細かったこと。
夕日の光を受けて輝く銀色がとても綺麗で繊細で、どこか儚いその人から目が離せなかった。
この人が『汐音』って人なら、王子様と騒がれるのも納得できると思った。
「…どいてくれない」
けれど、そんな見た目とは対照的に発せられた言葉は、声のトーンはあまりにも冷たかった。
「教室、入りたいんだけど」
「え、あ、あぁ…悪い」
「てか、どうしたの汐音。まだ療養してんじゃなかったの?」
「なんだっていいだろ。仲良くもないのにいちいち構わないで」
「あーあー、そーですかぁ」
「……………」
…確かに、これは相当だ
ついジッと見つめていたら不意に目が合ったような気がして、すぐ様目を反らすがその視線に捕まった。
「…僕になにか用?」
「……いや…」
「…あっそ」
そう答えるのがやっとで、下を向いた視線が泳ぐ。
そこで、はた、と動きが止まった。
深く考えることもなく、直感のままに、気付けばすれ違いざまにその人の腕を掴んで引き留めていた。
「なあ、お前、ピンクのカーディガン着てなかったか?」
たった今、初めて会ったばかりの人に自分はなにを聞いているんだろう。
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