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美術室、いつもの場所から①
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-----美術室からは野球部のグラウンドがよく見える
そんなことを幼なじみに言われて、美術部に入部した。
特に絵を描くことが好きなわけではない。
ただ、彼を見ていたかった。
僕は窓際に座り、スケッチをするふりをしてグラウンドの彼を見ていた。
「こ~ら~」
「えっ?」
ぼーっと彼を眺めていたら上から声が聞こえた。
「またグラウンド見てる!!一応部員なんだから何かはしてよね!」
「ごめん・・・でもさぁ・・ちょうど絹谷君が・・」
「また絹谷か・・咲もほんとモノ好きだね・・・」
今話している彼は市浦 和葉(しうらかずは)
美術部の部長で僕の幼なじみ。
そして今話のタネになっているのが僕の好きな人・・。
野球部部長の絹谷 涼司(きぬたにりょうじ)
僕が美術部に入るきっかけを作った人。
「もう・・・真面目にしないと怒られるの俺なんだけど・・」
和葉はそう言ってキャンバスに向き直った。
僕、咲坂 幸(さきざかこう)は昔から男しか好きになれなかった。
初めて好きになった人も小学校の同級生の男の子だった。
平凡な見た目に反して好きになるのは美形な子ばかり。
そして高校生になった今、やっぱり好きなのは男。(入学したのはもちろん男子校)
初めて彼・・絹谷君に出会ったのは1年生の時。
同じクラスになったのがきっかけだった。
絹谷君は野球の強いうちの高校に特待生で入学してきた。
彼は背も高くてかっこいい。きりっとした目元と野球で焼けた黒い肌。
明るい性格で皆に気を使える。いつも周りにはたくさんの友達。
もちろん平凡でクラスにひとりはいる空気みたいな存在の僕には話しかける勇気もなかった。
そんなある日のことだった。
幸運なことに絹谷君と日直が一緒
放課後に日誌を書いていると、彼が話しかけてきた。
「悪ぃって・・お前ばっか仕事させんの・・・」
「い、いいよ。絹谷君は部活あるんだし」
「でもなぁ・・今日の仕事全部咲坂がやってんじゃん」
彼はバツが悪そうな顔をしていた。
そう今日の日直の仕事は全部僕がしていた。
いいところを見せようと必死だったな・・今日の僕。
「でも、部活はいいの?遅れちゃうよ?僕は帰宅部だし大丈夫だよ」
(いいとこ見せようと必死すぎでしょ自分)
「なら・・・いいのか?咲坂・・」
「大丈夫あと日誌だけだし。早く行かないと遅れるよ!」
「本当ごめんな。俺行くわ!今度埋め合わせすっから!」
そう言って彼は駆けていった。
そして翌日絹谷くんは本当に埋め合わせをしてくれた。
「こんなことした思いつかなくて・・嫌いか?一緒に食おうぜ」
「う・・ううん、ありがとう!」
「ならよかった」
昼休みの教室。彼はそういって僕の前の席の椅子に座った。
僕の前に置かれた大量の菓子パン
彼なりの埋め合わせらしい。
ちょうどその日、僕はお弁当を忘れた。購買部に買いに行く予定だったし手間が省けた。
大量の菓子パンの中の一つを絹谷君は手に取って食べ始めた。
「僕はこんなに食べられないから残ったら絹谷君が食べてね?」
「わーってる。お前細いし、食べられそうにもないもんな」
彼は冗談っぽく笑った。
その笑顔がとても印象的で、その日一日頭から離れなかった。
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