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錯乱
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「嘘…だろ…………じゃあ、俺は…」
「あなたは、現国王のご子息であり、正統な後継者です。」
目の前が真っ白になるような感覚に陥る。
俺が、この人と現国王の息子で、後継者だと?
意味がわからない。
わかりたくない。
俺の思考は、ぐしゃぐしゃになり、混乱していた。
「混乱するのも分かります。ですが、あなた以外に王家には男子が生まれていないのです。ですから、あなたが帰ってきた今、あなたが後継者なのです。」
自分を俺の母親だと言った女性が淡々と述べると俺に近づいてきた。
嫌だ。
いきなり、母親だと言われても信じることが出来ない。
むしろ、恐怖・憎悪・嫌悪という感情のほうが強かった。
来るな…
来るな……
来るな………!
俺が、拒絶しようとした瞬間だった。
カインが、俺らの間に入り、背中に俺を庇いながら、暖かい手で俺を制する。
「すみません。デーヴァも混乱してるだろうし、今日は大変なことがあり過ぎました。だから、休ませていただけませんか?」
カインは、最大限に気を使って喋っているのがわかる。
慣れない敬語に、慣れない衣服、慣れない環境。
それに、恐れているのは、俺だけじゃなく、カインもそうなのだと気付いた。
俺は、申し訳ないような気持ちになり、俺は思わず俯いた。
「ごめんなさい。だけど、知っておいて欲しかったのです。これから、大変なことも多いでしょう。ですが、諦めないで、あなたに我ら森の民の命運がかかっているのです…」
そう言って、女性は他の女性達を引き連れてこの部屋から出て行った。
俺は大きく息をはく。
命運なんてかけられるほど俺は大層な人間じゃない。
それに、俺は村を焼かれても、村人が死んでも悲しみが湧かないのだ。
湧くわけがない。
いつも蔑まれてきたんだ。
相手が俺に対して、好意を持ってない以上どうやって感情を抱けばいい?
そんなの到底無理な話だ……
そんな奴に、森の民を救うなんて出来ると思えない。
「デーヴァ、あんま難しく考えるな。俺らはこれから大変だろうけど、今できることをいまやって、俺ららしくいられれば、それでいいじゃん。」
カインは整えられた俺の髪をぐしゃぐしゃに撫で回した。
俺らしく…か……………
その言葉で俺の心は少しだけ軽くなった気がした…………
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