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はじまり
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『さようなら、ありがとう』
置き手紙を置いてきた。
もう会うこともないだろう優しい人。
俺なんかに捕まってしまった可哀想な人。
昨日、居酒屋ではじめて会ったその人に、俺は酔ったフリをして抱いてくれと願った。
酔ったフリをしていたけれど、きっと、自分が思っていたより酔っていたのだろう。
はじめて会った人にあんなに泣いて縋るなんて。普段の俺じゃ考えられない。
(あー、悪いことしたなぁ。)
突然酔っぱらいに絡まれて、愚痴を聞かされて、ホテルに連れて行かれて抱いてくれと頼まれるなんて。本当に悪いことをした。
別に男なんか好きじゃない。
むさ苦しい男なんかより、柔らかくていい匂いのする女の子の方が好きだ。
だけど、俺はあの人が好きだった。
本当ならばあの人に初めて抱いて欲しかった。
でもそれももう出来ない。
それならば
それならばもう、こんなものさっさと捨ててしまいたい。
誰でもよかった。
あの人じゃないんなら、だれでも。
自暴自棄だって分かっていたけれど、初めてを捨てたくて。
優しいその人を利用した。
さようなら、あの人の事が好きだった自分。
さようなら、俺のわがままに付き合わせてしまった、名前も知らない優しい人。
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