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『あの日』を見ないように顔を伏せて、目的のものを探す。
はやく、はやく見つけて、帰ろう。
「…あ、あった」
本棚の一番右端。
少し分厚い資料の本。
探し物は案外早く見つかった。
たまにしか使わないけれど、大事なものだから、見つけやすい場所にしまっておいたんだった。
本棚から抜き出して資料の中を確認する。
…うん、目的の忘れ物で間違いない。
探し物が見つかった途端、また急に居心地が悪くなって、『あの日』が俺を圧迫しようとしてくる。
その重みに不安になって、見つかったばかりの資料を胸にぎゅっと抱きしめる。
ーー早く出よう。
そう思って、廊下の方に歩き出した、その時。
ピーンポーン
チャイムがなった。
『あの日』に動揺したせいで、少し遅くなってしまったから、市川が呼びに来たのだろう。
「あ、ちょっと待って、すぐ行く!」
外に聞こえるように大きな声で言うと端っこに置いていたカバンの中に資料を入れる。
急いでカバンを持って玄関で靴をはきながらドアを勢いよくあけた。
「待たせてごめん!市川」
少し屈みながらかかとに指を入れて靴をしっかりとはく。
急いでいても、靴をふんずけるのは嫌だから。
左右靴をはき終えて、そこでやっとおかしなことに気がついた。
返事がない。
ということに。
「……い、ちかわ?」
恐る恐る、顔を上げる。
「ッ…あ…」
まさか。
そんなはずない。
いるはずない。
だって、…だって、俺は必要ないはず。
「あ、篤斗さん…」
居るはずないんだ。
居ちゃ、いけない。
だって、篤斗さんには、
「…祐介くん」
恋人がいるんでしょ……?
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