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「ッ…、う、嘘」
「嘘じゃない」
緩い拘束を解いて、しかし、俺の手はしっかりと握ったまま、うつむく俺の顔を覗き込むようにして篤斗さんが言う。
嘘じゃない、のだとしたら。
本当のことなのだとすれば。
それは、どれだけ幸せなことなんだろうか。
「だって、俺は」
見たんだ、あの日。
親しげに寄り添う女性を。
あれは何だったの?
「…ううん、なんでもない」
今更、聞いても意味はない。
聞く勇気も、ない。
もう、期待することには疲れてしまった。
「きっと、それは、何かの間違いです。男を好きだなんて………」
言葉を吐き出すたび、ズキズキと胸が痛む。
これは篤斗さんに向けての言葉じゃない。
自分に対しての言葉だから。
「男を好きだなんて、ありえない」
もしも、あの女性の事が勘違いだったとして。
もしも、本当に篤斗さんが俺のことを好きだったとして。
だとしても、俺は、受け入れてはいけない。
あの日、女性と歩いていた篤斗さんを見て、お似合いだと思った。
あれが、本来のあるべき姿なんだ。
「きっと、勘違いです」
俺なんかに、引っかかっちゃいけない。
「…そんな顔するなら、そんなこと言わないで」
頭をぐしゃりと撫でられて、ビクリと肩を震わせて、篤斗さんを見る。
篤斗さんは泣きそうな、苦しそうな顔をしていた。
「勘違いじゃない、本当に」
その言葉に、鼻の奥がツンと痛くなって、涙が出そうになる。
言葉がでなくて、でも、それでも、代わりにふるふると頭を横に振って、篤斗さんの言葉を否定する。
だめなんだ。
認めてしまったら、だめなんだ。
「祐介くん、」
駄々をこねるように、頭をふるふると振って否定し続ける俺の肩を持って、篤斗さんが何かを言おうとした、その時。
「上野ー?遅いから迎えに来たぞー」
少し開いていたドアが開いて、市川が顔をのぞかせた。
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