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友人 康介
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登校後、クラスに入ると数人の塊が窓際で盛り上がっていた。
僕の席は窓際の一番後ろ。盛り上がる人集りを避け、自分の席に座った。
始業のチャイムまでの時間は読書でもしようと本を取り出す。本を開きかけるとすぐに、盛り上がっているその塊の中から元気な声で挨拶が聞こえた。
「竜(りゅう)おはよー!」
塊の中心にいて元気に僕に挨拶をしてくれるのは康介(こうすけ)。
幼稚園の時から仲良くしてくれてる僕の幼馴染。いつも元気で明るくて、自然に友達が集まってくる……そんな康介は僕の大切な友達。
僕が唯一、気兼ねなく話ができるのは康介だけ。こうやって毎日挨拶してくれるし、僕がクラスから孤立しないように気を遣ってくれてるのがよくわかる。
優しくて頼りになる、僕のただ一人の友達……
「なぁなぁ、 竜はD-ASCHってバンド 知ってる? 超かっこいいんだよ! ちょっとこっち来いよ」
そう言って、康介は僕をみんなの輪の中へ導いてくれた。
D-ASCHって、バンド?
知らないし……
全く興味はないけど、康介が呼んでくれたのもあり、なんとなく僕はその輪の中へ入った。
康介の話を聞いていると、どうやらD-ASCHというバンドはこの学校のひとつ上の先輩達がやっているバンドらしい。
他のクラスメートも知ってる奴が数人いるみたいだ。
康介は三年生にお兄さんがいるんだけど、どうやらそのお兄さんにライブに連れて行かれて一目でファンになったみたいだった。
そしてクラスメートのファン同士で、こうやって盛り上がっている。
それにしても康介楽しそう。
興奮し顔を紅潮させ、くるくると表情を変えながらみんなにD-ASCHの凄さを語っている康介の様子が面白くてつい口元が緩んだ。
「おい! ニヤニヤしてないでちゃんと聞けよ竜」
僕の様子に気がついた康介が身を乗り出してきて文句を言った。
「あ……ごめんごめん、聞いてるよ。D-ASCHって凄いんだね」
たいして話は聞いてなかったけど、僕は適当に返事をした。
僕の言葉に康介はパアッと表情を明るくし、「今度ライブに連れて行ってやる!」と嬉しそうにそう言って僕の肩をポンと叩いた。
え……?
やだな、面倒くさい。
朝の読書タイムが、見知らぬバンドのライブに行くという約束をする面倒ごとに変わってしまった。
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