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お弁当とライブの約束
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「母さん おはよう」
朝起きて階段を降りリビングへ行くと、トーストの焼ける香ばしい匂いが鼻を擽った。
「おはよ、時間大丈夫? 朝ごはん出来てるわよ。早く支度しなさい」
母さんの言葉をぼんやりと聞きながら、のそのそと支度をして僕はパンを頬張った。
「はい、お弁当」
母さんが僕にお弁当を手渡してくれる。
多分他の同級生のと比べたら小さめのお弁当箱。僕は少食なんだ。「もっと食べて太りなさい」なんて余計なお世話を色んな人によく言われるくらい、僕は華奢な体つき。
高校に入ったら僕なんかより全然体格のいい人もたくさんいて、色が白くてひょろひょろしている僕はちょっと気になってしまう。でも運動をしてるわけでもないからそんなに食欲は湧かないし、鍛えようにも運動も苦手だからしょうがないよね……と、そういう所は諦めていた。
「ありがとう。いってきます」
弁当を受け取った僕は学校へ向かった。
しばらく歩いていると、後ろから康介に声を掛けられた。
「よっ!」
「おはよう」
ピョコンと小さな寝癖をつけた康介が笑顔で手を挙げる。寝癖を指摘すると、康介は照れ臭そうに慌てて頭を手で押さえた。
「そうだ、こないだの話! 来週末ライブあるんだって。楽しみだな!」
何の話だろう?
「ライブって?」
康介の言っている意味がわからなくて、僕は正直にそう聞いた。
「おいおい!一緒に行くって言っただろー⁈ 忘れてんなよ」
康介がわかりやすいくらいにプゥっと膨れる。
そう言えばそんな約束していたっけ。全く頭から消えていて、康介に言われて改めて面倒くさいと思ってしまった。
本当に行くんだ……気が重い。
学校の昼休み、お天気がいいので僕は屋上に向かう事にした。
いつもお昼や休み時間は一人でいることが多い。
今日もいつもと同じく、僕はお弁当を片手に教室を出た。
「竜ってお昼、いつもどこいってんの? 一緒に食わね?」
康介が僕に声を掛ける。
「別にいいけど……お天気気持ち良さそうだから屋上行こうと思って」
康介は僕と違って色んな人といろんな場所で休み時間を過ごしていた。
だから声をかけてもらってちょっと嬉しかった。
「んじゃ先に行ってて。 俺購買でパン買ってくる!」
康介は軽く手を振りパタパタと廊下を走って行ってしまった。
康介と別れ、僕はひと足早く屋上に到着する。いつもの一番奥の場所へ腰掛けた。康介も後から追いつき僕の隣に腰掛け、他愛ない話をしながら二人で昼休みを過ごした。
暫くすると突然康介が騒ぎ出す。
「今日バスケの練習試合だ!パンだけじゃ 力出ねえじゃん〜!マジかよ失敗したぁ!」
康介は空を仰ぎ、両手を額に置き大きな声で嘆いた。康介は部活には入っていないけどその運動神経を買われ、あちこちの部活から助っ人として声をかけられていた。そして練習試合くらいなら出ることも多々あった。
今日もまた運動部の助っ人なのか、昼食が足りないと言って嘆いてる。……なんだか少し可哀想。
「康介? 僕の弁当食べていいよ。はい、これあげる」
見かねた僕は渡瀬家イチオシの唐揚げを康介に差し出した。
「……あ、ありがと」
ちょっと戸惑った顔をして、康介は僕の唐揚げをパクッと食べた。
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