アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
身体の傷と心の傷
-
大乱闘で終えた棒倒しの結果は、最後まで残っていた白組が一位。次に残っていたのが紅組で二位。そして青組が三位……という結果だった。
無傷、または軽い怪我の出場者はバラバラと応援席に戻っていく。でもやっぱり康介はなかなか戻ってこなかった。
怪我しちやったかな。みんな大丈夫かな?
僕は心配で救護テントに行きたかったけど、遠目で見てもかなり混み合ってるのがわかるので邪魔しちゃ悪いと思いしばらく待つことにした。
先に戻ってきた軽傷の先輩たちが口々に「ヤバかった」と話す。
「今年はヤバかった! マジ死ぬかと思った……俺ら頑張ったよな!よく最後まで死守したよ」
本当に白組はよく頑張ったと思う。やっぱり棒を守っていた人より攻めていた人の方が怪我人が多いのだろうか? でも思ったより早くに康介が応援席に戻ってきた。
目の上と肘に絆創膏。少し痣も見える。
「康介、大丈夫?」
僕が駆け寄ると、照れ臭そうに笑いながら「問題なし!」 と答えてくれた。そんな康介がふと真面目な顔をして僕を引っ張る。人混みから少し離れ、小声で僕に言った。
「竜、周さんやっぱおかしいぞ……俺さ、周さんにイラついてたからさっき数発殴ってやったんだよ。あ……悪い。ついな…… でも周さん、俺には一切手ぇ出してこなかった。絶対やり返してくるかと思ったのにさ」
……康介。
「あの人さ、俺のパンチなんて余裕で避けれる筈なんだよ。おまけに二発綺麗に入ったところで、小さな声だったけど俺にごめんなって謝ったんだ……俺が周さん殴ってんのにだよ? 」
康介が僕を見てしょんぼりした。康介、怒りに任せて周さんを殴ってしまった事、気不味く思って反省してるんだ……
「周さんさ、自分でも悪かったって思ってるんだよ。だから康介に謝ったんじゃないのかな。康介も後で周さんに謝ろうね……みんな怪我、大丈夫そうだった?」
周さんが康介に謝ったと聞いて、少しだけどホッとした。救護テントの方はだいぶ人は減ってるみたいだけど、忙しそうに動きまわっている高坂先生の姿が見えた。
「ちょっと僕、救護テント行ってみる……」
そう康介に告げ僕はテントに向かった。
********************
修斗side
今年の棒倒しはメチャクチャだったな。俺まで怪我するなんて最悪……去年は上手くやったのに。
俺は救護テントで、大きく擦りむいた足に自分でパッドを貼る。
……それにしても
周のやつ、あれはやり過ぎだろ。
竜太君の事でイラついてんのはわかるけどさ、周にやられて気を失ってる奴もいた。あんな暴れ方しちゃ高坂に怒られるのも無理はない。
俺は隣で高坂先生に顔の傷を手当てしてもらってる周を見る。あの顔の傷だって康介君に黙って殴られてたやつだ。
あんな風に自分から謝るくらいなら、康介君にあたらなきゃいいのに……
「なぁ周……さっき竜太君、泣いてたぞ。しばらくここで休ませたけどさ、お前、何した? 大丈夫か?」
周は何も答えず俺を睨んで黙ってる。
「分かってると思うけど、自分が焦ってるからって竜太君にまであたるのは可哀想だろ……」
俺から目を逸らした周は、何かを考えるような顔をして話し出した。
「勿論、竜太が俺以外の奴とデートするとか許せねえんだけどよ、それ以前にあいつがさ……人見知りなあいつが自分の知らない奴を選ばなきゃいけねえなんて事になったら辛いだろ? だから安心させてやりたいから俺は頑張ってんのによ、竜太がラッキーボーイに選ばれてからやたらとあいつに色目使う奴らも増えてるし、竜太は竜太で全然自覚ねえから、いい加減イライラすんだよ」
最後には吐き捨てるように俺に言った。
「でも竜太君は事情を知らないから……」
「俺だってそんなのわかってんだよ!……竜太は何も知らねーんだ。なのに俺はあいつにあたっちまった。抑えらんなくなってる……最悪だな。俺、絶対竜太に嫌われた」
そう言って周はでっかい体を小さく丸めて黙りこんでしまった。
「………… 」
いや、竜太君はお前の事嫌いになってなんかないから安心しろって。
心配そうな顔をしながらこちらに歩いてくる竜太君を見て俺は思った。
俺はしょげている周の頭を撫でてやる。
少し離れたところでニヤニヤした高坂先生が呟いた。
「弱りきってる橘は可愛いなぁ 」
ほんと、この先生は周をからかうのが好きなんだな。
いい性格してる。
修斗side終わり
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
126 / 473