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康介君の想う人
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康介君と大喧嘩した日から一度もも喋っていない。喋ってないどころか顔すら見ていなかった。
きっと怒ってんだろうな……
気不味いな。自分のせいなのにさっさと謝っちまえばいいのにそれすら出来ない自分が情けない。
カラオケに行った前日に見た康介君に告白してた奴の事を思い出した。どっかで見たことあるなと思ってたんだ。
一年の小峰とかいう奴。
可愛らしい顔つきで「そっち」の奴らにえらくモテてるって噂の男だった。俺ら二年の間でも簡単にヤらせてもらえるって話題になってた一年生。俺は初めてその噂を聞いた時、男でもそんな股……もとい、尻のゆるい奴がいるんもんなんだなぁ、なんて思ったっけ。また康介君はとんでもない奴に好かれちゃったな、と少し心配でもあった。
そんな事を考えながら、俺は授業にも出る気になれず屋上へ逃げた。
屋上に来た奴らにも見つからないように、奥の奥……ちょうどいつも昼メシを食ってる場所の裏側に横になる。この場所って意外と知られてないんだよね。みんな壁だと思ってる。でも裏に回れるのを知ってるから俺はよくここでサボってるんだ。
昼寝をしようと横になってると、人の気配がした。
気づかれないように静かにしていたら話し声が聞こえて、その人物が康介君と小峰だと気付く。
……やべ。盗み聞きしてるみたいじゃん俺。
でも今更出て行くわけにもいかず、ジッとその場にとどまった。
「……俺さ、小峰の事好きだよ。でも小峰の想う好きと、俺の言う好きは違うんだ……だから、友達としてなら付き合えるけど、恋人同士としては付き合えない」
うわっ、結構 声近いな……丸聞こえだ。
いたたまれなくなったけど、出ていくわけにもいかないから、早くどっかいけ! と心の中で念を送った。
ゴメンと謝る康介君に、小峰が謝らないでと言ってる。声だけ聞いていると、少し高めで可愛い声の小峰。
「……もしかして康介君、好きな人いるの?」
恐らく小峰は康介君にドキドキしながら 上目遣いでそう聞いてるんだろう。
なんだよ。俺までドキドキしてるじゃんか。
「……好き、なのか俺にもわからない」
どんな表情をしてるのかはわからないけど無愛嬌な声色で、康介君はそう答えた。そんな康介君とは対照的なハッキリとした声で小峰が笑う。
「わからないんじゃ、それはきっと好きじゃないんだよ」
そっか……
康介君の想う人はどんな人なんだろう。
俺、そんな康介君を自分が楽しみたいばっかりに散々振り回しちゃったんだな。
気になる人がいたのかもしれない。その人と放課後とか遊んだりしたかったのかもしれない。
なんだか悪い事したな……
そりゃ俺、康介君にイラつかれて当然だわ。
なんだかますます気分が落ちてきそうだったので、俺は意識を遮断し瞼を閉じた。
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