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遭遇①
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下校時刻になり僕は康介に部活に出て帰ると伝えた。
「じゃあ、部活終わったら一緒に帰ろうぜ」
康介はそう言って、そそくさと教室を出て行った。きっと修斗さんのところだろうな。僕はそんな康介を教室から見送って、携帯をチェックする。
うん……凪沙からは返信は無い。
先程凪沙に断りのメールを入れたものの、どう思ったかな? と少し気になっていた。
携帯をポケットにしまい、鞄を持って部室へ向かう。
美術部は三年生が既に部活を引退し、他学年は自由参加になっている。部室に入ると先生が一人で作業をしていた。
「今日は渡瀬君だけみたいだね」
先生にそう言われ、僕は描きかけの絵を少しだけ進めて早目に帰ることにした。
先生に挨拶をして、また教室に戻る。
誰もいない……
一緒に帰ろうと言っていた康介がここにいないと言うことは、きっと修斗さんと一緒だろう。邪魔するのも悪いな……と思い、僕は康介に簡単にメールを入れて一人で学校を出た。
『先に帰ってるね。修斗さんとごゆっくり』
今夜は周さんにはメールじゃなくて電話をしてみよう。
久しぶりに声が聞きたかった。
信号待ちで僕はポケットから携帯を取り出し、周さんにメールを打った。
『バイトが終わったらメールください。周さんの声が聞きたいです』
……送信。
送信と同時に信号が青になる。
人の流れに乗って前に進んでいくと、不意に誰かに肩を掴まれひっくり返りそうになってしまった。
え?
よろけた拍子に、肩を掴んだその人に寄りかかってしまった。
一体なに? びっくりした……
「おいおいおい、随分と細くて頼りないんだな……大丈夫か?」
すぐ頭の後ろで男の人の声がする。
「あ……すみません」
思わず謝りながら、これは僕が悪いのかな? と疑問に思った。肩を掴んで引っ張ったのはそっちじゃないか。ムッとしながら振り返ったら、そこにいたのはどこかで見たことのある顔だった。
「君だよね? 竜太君ってのは。こんにちは」
……?
「こ……んにちは。えっと、あ! もしかして凪沙さんのお兄さんですか?」
そうだ、思い出した。
あの時、公園に凪沙を迎えに来たお兄さん。双子だよね? 同じ顔した人がもう一人いたはず。
凪沙のお兄さんは僕の顔を見てにっこり笑うと、そうだと頷く。
僕はお兄さんに肩を掴まれたまま、とりあえず信号を渡った。
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