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遭遇②
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「ちょっとさ、聞きたいことあんだよ竜太君に。付き合ってくんね?」
そう言ってお兄さんは僕の肩に腕をまわしてずんずんと歩いていく。
どこに行くんだろう。
「あ……すみません。僕、足を怪我してて、もう少しゆっくり歩いてくれますか? ちゃんとついて行きますから……その、肩も離してください」
歩きにくかったのでそうお願いすると、ちょっとキョトンとした顔をして僕から離れてくれた。
「悪かったな。足どうしたの?」
心配そうに僕の顔を覗きこんでくる。
「階段から落ちて骨折しちゃったんです。松葉杖なくてももう全然大丈夫なんですけど、まだ少し痛いと言うか、慣れなくて……」
「げー、痛そ! お前鈍臭そうだもんな」
なにそれ、初対面のなのに失礼だなこの人。ズケズケとものを言うところ、凪沙とよく似てる。
そして歩きながら気がついたけど、こっちの方向って周さんの家と近いかもしれない。
あ、そうか。凪沙は周さんと一緒の中学校だから、学校区が同じで近いんだきっと。
「あの……どこまで行くんですか? 僕、今日は早く帰りたいんですけど… …」
正直、今すぐにでも家に帰って周さんからの 'バイト終わったよメール' を待ちたかった。
お風呂に入ってサッパリして……
それで周さんからのメールを待って、メールが来たらすぐに僕から電話をするんだ。
久しぶりに大好きな周さんの声を聞いて、お疲れ様でしたって言ってあげるんだ。
電話で話すだけなのに、こんなに楽しみでワクワクする。
それなのに、想定外のこの状況。
早く用件を済ませて帰らせて欲しい。
「早く帰りたい? あぁ、そりゃ竜太君次第だな……」
お兄さんは表情を変えずにそう言った。
ん? 僕次第? なんだそれ。
「すぐそこだから……」
そう言ってお兄さんが指差した先は一軒のアパートだった。
周さんちによく似た木造のアパート。
そこの一階、端の部屋のドアの前でお兄さんは立ち止まり、鍵を開けて中に入った。
僕がドアの前で入らずに立っていたら、笑顔で手招きされた。
「竜太君、あがって」
「お邪魔します……」
玄関を入るとすぐに台所があり、奥にリビング。
なんだか気持ちガランとしていて、必要最小限のものしか置いていないのに気がついた。お兄さんについて奥まで進むと、リビングにはもう一人の同じ顔をしたお兄さんが座っていた。
「やぁ、竜太君いらっしゃい」
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