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「・・・・とにかく、灯真に彼女を近づけないように、気をつけよう。」
長瀬が呻くように言った。
それ以来、雫はいつも以上にぴったりと灯真に寄り添った。
色素の薄い灯真のかたわらに付き従っていると、ほんとうに影のようだ、と
メイドたちが囁き合った。
盲目で病弱な灯真の部屋には、錠がついていなかったが、これも長瀬が
密かに取り付けさせた。鍵を持つのは、長瀬と雫、ふたりだけだった。
長瀬は千景のことも警戒したが、千景を見る、雫の目つきにも危惧を感じていた。
穏やかで、荒ぶったところの全くない子なのに、信じられないくらい暗いまなざしで
彼女を見つめているのに気付いたからだ。
脳の視覚野の件は可能性の話でしかない。が、雫はそうは受け取っていない。
彼に言わなくてもいいことを言ってしまった。長瀬は心の中で歯がみした。
「君は余計なことをしないように。」
釘を刺してはみたが、長瀬は雫の一途さに、不安を感じざるをえなかった。
しばらくは、何事もない穏やかな日々が続いた。
灯真の父はなにかと多忙で、家をあけることが多く、千景も友人などを招いて
それなりに楽しんでいるようだった。
少し不安定だった灯真の精神状態も、ぴったりと離れない雫と、さりげなく
フォローする長瀬医師に守られて、落ち着きを取り戻していた。
が、小さな隙間に風が入り込むように、平穏な日々に綻びが生じた。
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