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「雫?」
ふと、胸騒ぎがして、灯真はバスルームのドアをあけた。誰かが走り去る気配。
「しずく!」
叫びながら廊下に飛び出したところで、長瀬に抱きとめられた。
「しずく!しずくは?」
腕をふりまわして長瀬を振りほどこうとしながら雫の返事を待った。
だが、いとしい人の声はいくら待っても聞こえない。
「しずく?しずくはどうしたの?先生!」
「灯真は足手まといだから置いて行くと、彼が言ったんだ。」
「うそだ!そんなの嘘!雫!しずく!僕を置いて行くな!しずく!!」
腕の中で灯真がさらに暴れる。手が長瀬の鼻にあたって眼鏡が飛んだ。
「どこにもいかないって言ったのに!ひとりにしないって!!」
「灯真!いい子だから落ち着いて!君は一緒には行けないよ。」
「いや!いやだ!しずくと一緒に行く!先生の嘘つき!やだ!しずく!!」
この細い体の、どこにそんな力があったのか、と思うほど灯真は暴れた。
このまま気が狂ってしまいそうな取り乱しかたに長瀬は恐怖すら覚えた。
「しずく!しずくーーーーーーっ!!」
半狂乱で雫を呼ぶ灯真のからだを、長瀬は胸がつぶれそうな思いで抱きしめた。
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