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いつも優しくて、よくしてくれた先生があのとき見せた激しい怒り。
あれは灯真さんのためだけじゃなく、僕のこころのために怒ってくれたのかもしれない。
先生、ごめんなさい・・・。灯真たちと暮らした日々がまた胸に蘇る。
もう帰れない場所。
先生、そして灯真さん。今どうしていますか・・・・。
窓から見える雨にけぶる空の向こうに、そっと雫は問いかけた。
そんな雫をしばらく見ていた千田は、グラスを置くと雫の手から農機具を取り上げ、
そのままからだを床に押し倒した。
「千田さん・・・。」
ぴったりと体をつけてのしかかってきたが、そのままじっと動かない。
頬と頬が触れて、千田の無精髭がちくちくした。
そして同時にあたたかい体温と息使いも感じた。
灯真のシルクのような肌とは違う、浅黒く陽に灼けた肌。
だが人肌のあたたかい優しさは同じだった。そして心地よい重み。
千田の告白を聞いてしまったからか、この無骨な男の孤独が胸にしみた。
これまでひとりで、何度こんな雨の日を過ごしてきたのか。
雫の目尻から涙が流れた。千田が頬を離してそれを見た。
「また泣く。」
「違うんです。・・・あなたが・・・暖かかったから。」
それを聞いて千田が唇を重ねてきた。優しいキスだった。
雫の腕がひかえめに背中にまわされた。
「じゃあもう、罰とか言わねえ?」
その問いに、雫は声を出さずにただ千田の目をみつめた。
にやり、と笑って体を起こすと、雫の体を軽々と抱き上げて千田は言った。
「今度は途中でやめないからな。」
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