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灯真は、雫が消えてからしばらくは、不安定な精神状態が続き、
屋敷から飛び出ようとしたり、ひどい癇癪をおこして暴れたりを繰り返していた。
屋敷の中を雫の名を呼びながら徘徊していたと思えば、
行き先を知っているはずもないのに突然、「しずくのところに行く」と
呟きながら外にでてメイドたちをあわてさせたり、部屋の物を投げたり倒したりして
泣きわめくこともあった。
わざと自分を傷つける行為もみられたので、刃物や紐状のものはもちろん隠したが、
長瀬は灯真からいっときも目が離せなくなった。
食事はもちろん、風呂も寝室もともにした。
「安心しなさい。わたしは何もしないから。」
胎児のようにまるくなって背中をむける灯真に、隣に横たわって髪をなでながら、
長瀬は繰り返しそう言った。
灯真の父はまだときおり捜査員が訪れる自宅を鬱陶しがり、
忌明け前から長瀬に全権をまかせて外泊を続けていた。
どうやら妾宅にいるようだった。
思えば千景も少し気の毒だったな、と長瀬はため息まじりに思った。
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