アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
48
-
手術後、麻酔から醒めた雫は、激しい痛みを黙って耐えた。
熱をもった患部を冷やしてやると、すこしとろとろと眠り、また激痛に
目を醒すことを繰り返した。
千田は雫のかたわらに座ったまま、手を握って眠った。
拳を握りしめる気配で目を覚ますと、そっと冷やしたガーゼをとりかえてやる。
そのとき覗く傷口に胸をえぐられる想いがした。
苦しそうな寝息をたてる雫の髪をそっと撫でながら、「ごめんな」と呟いた。
数日後、痛みが引いて来ると雫は農作業に出ようと起き上がった。
「おい、まだ無理だろう。」止める千田に、
「これ以上寝てたら体が・・・。」といいかけて、自分の声に驚いたように黙った。
「声帯も傷つけたから。」辛そうにいう千田に、雫は笑って見せた。
「はい。ありがとうございます。」
余計に辛かった。その笑顔が、痛々しく引き攣れていたから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 60