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目が見えなくても、いや、見えないからこそ、香りのなかに色彩を感じる。
庭師の届ける花の香りが、灯真の意識のなかに少しずつ、彩りをもたらした。
芳香を放つ花は虫を呼び、虫は鳥を呼ぶ。
盲目の主を誘い出そうとするように、木々は香り、鳥がさえずる。
窓を開けて、風のなかにたたずむ時間が増えた。
まぶたに感じる日差しに、季節の移ろいを知り、
鳥の声に夜明けや夕暮れを教えられる。
窓辺からバルコニーへ。
バルコニーから小さな中庭へ。
そして、屋敷を取り囲むように緑があふれる大庭へ。
灯真は少しずつ、
ほんとうに少しずつ、外へ意識を向けていった。
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