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灯真は、言われた通りしばらくじっと立ちすくんでいたが、
花の香りに誘われるように、その方向へゆっくりと手探りで進み始めた。
風が吹くたびに、甘い香りが体の横をすり抜けて行く。
かなり近づいた。もう少しで花に手が届く。そう思って腕を伸ばしたとき、
花壇の縁石らしきものに足をとられた。
「!」
バランスを崩して倒れる、と思った瞬間、背後からふわりと抱きとめられた。
なんとなく慣れた気配に先生、と言いかけて
「お怪我はありませんか。」と問いかける、蛙を踏みつぶしたような声に、
「だれ。」と警戒の声をあげた。
灯真からすっと離れた声の主は、耳障りなしゃがれ声で
「ここでお世話になっております、庭師にございます。」と答えた。
ああ。いつも花を届けてくれる人か。灯真はそう思ったが、
「そう。」とだけ応じて花に顔をむけた。
「フリージアです。」庭師が花の名だけを告げた。
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