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はっ、と、息を吸う気配とともに、とっさにふりほどこうとした手を強く握りとめる。
「しずくだ・・・。そうだね?」
「いえ、わたしはそのような名では。」
メイドが話していた庭師の風貌のことをはっと思い出した。
狼狽する庭師の手から腕、肩へと順にまさぐった。
体はずいぶんがっしりしてる。
背も少し高い。
でもそれはきっと、離れてすごした年月のせい。
両手で顔を捉えた。
「ぼっちゃ・・・」
指先にケロイドのつるつるした凹凸と、ひきつった皮膚の皺が触れる。
まるで人ではないような感触に、一瞬ひるんだ。
けれど。
その奥の、骨格。耳の形。
つぶれた声を出している、顎から喉のライン。
そして、かさかさにひび割れているけれど、なつかしい、唇。
あふれる涙を拭うのも忘れて、灯真は庭師の顔に指を走らせた。
「こんな!・・・こんな火傷くらいで、僕をごまかせると思うのか。」
思わず叫んだ灯真の強い口調に、抵抗していた庭師の動きが止まった。
「お前のことならなんでもわかる。なにひとつ忘れてない。しずく!」
灯真の慟哭に応えるように、庭師の喉の奥で、嗚咽がもれた。
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