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大庭の真ん中に、花に囲まれるように立つ東屋に、雫は二人を案内した。
「段があります。気をつけて。」
さっきから腕を掴んで離そうとしない灯真の手をとって、エスコートする。
主を挟むように、長瀬と雫も腰をおろした。
「まったく、なんて無茶なことを。」長瀬の表情は硬い。
「・・・・ごめんなさい。」
俯いて詫びた雫は、だがすぐに顔を上げてまっすぐに長瀬を見つめた。
長瀬はまだ彼の顔が直視できず、微妙に視線を外した。
「先生。お願いします。絶対にご迷惑はかけませんから、このまま、庭師として
灯真さんのそばにいさせてください。」
「先生。」灯真も、雫の腕を掴んだまま声をあげた。
長瀬は唸った。
この少年は、灯真のもとに戻る、ただそのためだけに、おのれの声も名前も、
顔すら棄ててきたのだ。そして黙って、盲目の主のために花の香を届け続けた。
そのこころに今更ながら胸が詰まる。
それでもこのままそばにおくことへの不安は大きかった。
かといって、またこの二人を引き裂くようなことは・・・。
「僕はひとごろしです。」ざらざらした声が雫の喉から流れ出る。
「その罪は一生消えません。でも、罰ならあとでいくらでも受ける。
腕でも足でも、差し出せといわれればそうします。
だから今は、灯真さんのそばにいさせてください。
この人との約束を守らなくちゃ。僕は灯真さんのそばから離れないって、
そう約束したんです。」
傍らで俯いていた灯真の瞳がきらりと光った。
涙をひとしずく落として、灯真は顔をあげた。
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