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「僕のせいだ。」
長瀬がその言葉に驚いた表情を見せる。
「雫が罪を犯したのも、その罪を償えずにいるのも、全部僕のせいだ。」
「灯真さん、それは違う。」雫の声を遮って灯真は続けた。
「違わない。僕が弱かったから。辛くて哀しいのは自分だけだと思って。
周りの人や先生が優しいのをあたりまえだと思って。
自分が弱くて守られてばかりなのも、当然だと思ってた。」
灯真の手がまた雫の顔を探り当てる。震える指で頬を撫でる。
「僕が雫を、こんな目にあわせた。」
雫が大きくかぶりをふって、灯真の手をとった。
「今度は僕が雫を守れるように強くなる。そして罰なら、一緒に受けるよ。」
「灯真さん・・・。」
泣きながら抱き合う二人に長瀬はかける言葉がなかった。
灯真を甘やかして、あげく雫を放逐したのは自分だった。
わたしは何をしてきたのか。自分の愛情は間違っていたのか。
そう打ちひしがれながら、それでも今、目の前で自分の気持ちをはっきり
言葉に出した灯真の姿に、喜びも感じていた。
そしてああ、やはりわたしは、雫にはかなわないのだ、という寂しさも。
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