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キャンドルバスルーム
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夜9時を過ぎてからのことだ。
お風呂に入ろうとしたら、浴室の明かりが点かなかった。
「あれ?」
ウソ、さっき風呂掃除した時は、点いてたよね?
そう思っても、同棲中の恋人はまだ帰ってないし、同意してくれる人もない。
パチパチと何度か、スイッチをオンにしたりオフにしたりしてみたけど、やっぱり照明は点かなくて。
「どうしよう……?」
オレは全裸で途方に暮れた。
電球のストックなんてないし、電気屋さんはもう閉まってる時間だ。コンビニに電球って、売ってたっけ?
でも、ホントに売ってるかどうか分かんないのに、また服着るのもちょっと、どうかと思うし。今日は何とか我慢して、明日買いに行った方がいいよね。
と言っても、脱衣所の明かりだけじゃ、スリガラス越しには弱い。
真っ暗じゃないからいい、かな? 懐中電灯でも持って入る? 防水じゃなかったような気がするけど、大丈夫かな?
あれこれ考えてるうちに、ふと、キャンドルはどうだろうって思いついた。
そう言えば、いつだったか従姉妹から貰った、水に浮かぶとかいうのがあったハズ。
あれ……どこに入れたかな?
曖昧な記憶を頼りに、クローゼットの透明収納ケースを覗くと、粗品で貰ったタオルとか布巾とか干支グッズとかの中に、キャンドルもすぐに見つかってよかった。
直径4センチくらいの半球形で、茶色と黒と白の3つ。確か、詰め合わせの中から、いらない色だけくれたんだ。
でも、灯りの代わりに使うだけだし、色なんてどうでもいい。
ラッピングのセロファンを剥がしながら、使い方をじっと見ると、芯をまっすぐに立てて火を点けるだけだ、って書いてあった。
ライターもマッチもないから、キッチンのコンロを使って火を点ける。
お湯の上にぷかっと浮いたキャンドルは、炎が揺らめいててスゴくキレイだ。
「うお、スゴイ……」
彼、これ見て何て言うかな?
よく思いついたな、って誉めてくれるかな? それとも「懐中電灯でいーだろ」って、情緒のないこと言われるかな?
あれこれ考えてると楽しい。うひっと笑いながら洗面器にお湯をすくって、ザバーッと体を洗い流す。
オレがお湯をすくうたび、湯船に浮かんだキャンドルが揺れて、見てるだけでも楽しかった。
頭も体も洗い終わって、キャンドルの灯りを眺めながら、ゆったりお湯に浸かってると、いきなりガタッと戸が開いた。
「うわっ」
ビックリして振り向くと、恋人が顔をしかめてこっちを覗き込んでる。
「何やってんだ?」
呆れたようなセリフと共に、カチカチとスイッチの音が聞こえて、にへっと笑う。
「電球、切れたから。代わりにこれ、水に浮かぶキャンドルっ」
得意げに言ったら、「はあー?」って声が返って来た。それから彼は靴下を脱いで、浴室の中に入って来る。
「お前、ちょっとは考えろよな」
って。えー、考えたからこうなったんだけど。
むくれながら眺めてると、彼は電球のカバーに手をかけて、くるくるっと回して外してる。
あっ、電球、買いに行くのかな? やっぱりコンビニに売ってた?
オレが見つめる中、彼は何も言わずに、切れた電球を持って出て行った。そして1分もしない内に、電球を持ってまた戻って来た。
えっ、もう買って来た? 替えの電球? って、なかったよね? それとも型番か何か、チェックしただけなのか?
不思議に思ってると、彼は手早く電球を取り付けてから、得意そうにオレを見た。
「見てろ」
って、カバーをキッチリ戻してから、ニヤッと笑われる。
「え?」
何だろう、と思ってたら――カチッ。彼が、外のスイッチをオンにした。同時にパァッと白い灯りが、浴室の中によみがえる。
「あれっ、替えの電球、あったっけ? どこに?」
ビックリして訊いたら、「玄関から持って来た」って。
玄関。言われてみれば、玄関の照明も、ここと同じ形の電球だ。
「あ……そうか」
キャンドル使うのだって、ナイスアイデアだと思ったけど。玄関から電球を持ってくるなんて、全く思いつきもしなかった。
「頭いいねー」
素直に誉めると、ちょっと照れた顔で「まーな」って言われた。
「覚えとけよな、玄関とココとトイレの電球は、同じだぞ」
彼は機嫌良さそうにそう言って――でもなぜか、せっかく点けた照明を消した。
パチッて音と共に、明るかった浴室が一気に薄暗がりに包まれる。
「えっ、どうした?」
驚いて腰を上げると、「待ってろ」って声がかかる。
「まだ出るなよ」
って。えー、もう十分温まったし、夏だし、長湯したい気分じゃないんだけど? そう思ってザバッと浴槽を出たら、彼が服を脱いで戻って来た。
全裸だ。
暗いけど、ゆらゆら揺れるキャンドルの灯りで、ニヤッと笑ってるのが分かる。
その股間が……勃ち上がってるのも、よく分かった。
揺らめく灯りが影を作って、ただでさえ巨きいモノが、凶悪に見える。
「え、っと……」
コメントに困って口ごもると、「いーじゃん、ロウソク」って誉められた。
ロウソク、って。なんかロマンに欠けるよね。けど、そんな言葉は口にできなかった。噛み付くようにキスされて。
「たまには、ムード変えてみんのもいーな」
キスの合間にそう言いながら、大きな手のひらが、オレのお尻をぎゅっと掴む。
べろっと首筋を舐められたら、「あっ」と小さく声が漏れた。
固くなった股間を、押し付けられる。
すべらかな裸の腕と胸に包まれる。
ここまできたら、オレだってもう、拒むことはできなくて――。
フロートキャンドルの灯りの中、浴槽に手を突かされて、炎を見ながら後ろから抱かれた。
(終)
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