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彼は... #会長side
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宗吉が、菅谷くんを追いかけていってしまった。
残された僕はその背中を見つめる。
......宗吉、相当惚れてるね。
僕は溜め息をついて、寮に帰ろうとする。
そこで、隣で立ち尽くしている男子を見つけた。
僕が見ていることに気がつくと、向こうも無言で僕を見つめてくる。
彼は確か......
僕は名前を思い出して、彼に笑いかける。
「こんばんは。渡辺くんだよね?」
彼は、ぺこりとお辞儀した。
「......こんばんは」
渡辺恭一郎くん
同じ学年だがそんなに面識はない。
バスケ部のエース、ということだけ知ってる。
僕よりもかなり背が高くて、ひょろりとしている。
菅谷くんと仲が良いようだ。
「置いてけぼりになってしまったね。
ねえ、僕と一緒に寮まで帰らないかい?」
僕がそう言うと、彼はまた僕を見つめる。
暫く沈黙が続いた後、「...はい」と答えてくれた。
なんだか不思議な子だなあ...
僕が歩き出すと、彼は少し後ろについてくるように歩いた。
...隣でいいのに。
僕はそう思うと、
「僕の隣に並ぶの、嫌なのかい?」
と訊ねた。
こう言うと普通の生徒は「いえ、光栄です!」と嬉しそうに言ってくれる。
しかし彼は、
「...会長の隣になんて滅相もないです。」
と抑揚のない口調で答えた。
他の生徒より崇拝してくれているのか、単に僕が嫌いなのか......
僕は溜め息を吐くと、一歩下がって、彼の肩にトンとぶつかる。
そして彼を見上げた。
「一緒に帰ってくれるんだろう?
だったら僕のこと嫌いでも並んで歩いてくれないかい?」
そう言って笑顔を向ける。
彼は驚いて跳び跳ねると、大きい体をよろけさせた。
そして尻餅をつく。
その様子に、何故かツボってしまった。
「ふは...っ」
僕が思わず吹き出すと、彼は猫のような目を見開いて口元を腕で隠してしまった。
耳が赤いので、どうやら照れてしまったらしい。
見た目に合わないなあ...と思いながら手を差し伸べる。
「ふふ...ごめんね。
そんなに驚くとは思ってなかったんだ。」
「......」
彼は僕の手を取らずに、黙ってそっぽを向いて立ち上がる。
馬鹿にされたと思ったらしい。
「ごめんよ。からかうつもりはないんだ。
怒らないで。」
「......怒ってない...です」
そういって頭を掻いている。
「ならよかったよ。」
彼から全然話し掛けてくれないので、僕から話し掛ける。
「ところで渡辺くんは菅谷くんと仲が良いんだね。」
僕がそう訊ねると、
「......別に。あいつとは仲良くないです。」
と先程までのたどたどしい口調とはうって変わって、きっぱり言われる。
仲良いと思われるの嫌なのかな?
「でも、一緒にどこか出掛けてたみたいだったじゃないか。」
僕が何の意図もなくそう言うと、彼は眉を寄せて、猫目を更に鋭くして言った。
「会長だって......結城とどこか...行ってましたよね...」
「うん。そうだけどさ。」
彼の反応には正直驚いたが、平然と答える。
渡辺くんは続けた。
「......会長は...あいつと結城が付き合ってるの......知ってるんでしょう...」
「...うん。知っているよ。」
あいつ、とは菅谷くんの事だろう。
渡辺くんは鋭い目をこちらに向けると、
「じゃあ......なんで結城から離れないんですか」
と言い放った。
「わからない。」
僕は笑って答えた。
本当はわかっているけれど、下手なことを言って生徒に広められると厄介なので、そう言うことにした。
渡辺くんは「......そうですか」とだけ言うと、僕から目を反らした。
彼は菅谷くんの事が好きなのだろうか。
それとも宗吉?
僕は少し不思議に思ったけれど、それを聞くことはなく寮に着いてしまった。
「おやすみなさい......」
彼はそう言うと、階段を上っていった。
その背中に、僕は先程の答えを投げ掛けた。
宗吉から離れないのは、
好きだからだよ。
菅谷くんよりも、何十倍も、何百倍も、何千倍も。
宗吉が好き。
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