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柏木アイザックくんと僕 #会長side
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生徒会が無い水曜日。
僕はある場所に向かった。
B棟の4階、1番西の角にある教室。
そこは、科学室。
扉を開けると、白衣を着た男子がこちらに気がついた。
そして、嬉しそうににっこりと笑った。
「カイチョサン!持ってきてくれまシタカ?」
僕も笑い返しながら、
「うん。ちゃんと持ってきたよ。」
と言って、鞄から四角い箱を取り出して、テーブルの上に置いた。
白衣の彼は、柏木アイザックくん。
科学部の1年生だ。
アイザックくんは箱からある物を出すと、僕の正面に腰を下ろした。
「それじゃ、始めまショー!!」
そう言ってぶかぶかの白衣の袖を捲った。
テーブルの上にあるのは、オセロだった。
文化祭の2週間位前。
生徒会の無い日に、松崎くんや藤森くん達数人と一緒に、オセロをやって遊んでいた。
僕は昔からオセロが得意で、その場にいる全員に勝ったんだ。
「さすがです薫会長っっ!!ま、さ、し、く!オセロ界の王子ッ!!!!」
松崎くんが大袈裟に褒めると、他のみんなも口々に褒めてくれた。
藤森くんは少し悔しそうだった。
そこで、藤森くんは何か思いついたように立ち上がると、「ちょっと待ってて下さい!」と言って教室を出ていった。
そして藤森くんが連れてきたのが、彼と同じクラスのアイザックくんだったんだ。
藤森くんはアイザックくんの腕を引いて前に出させた。
「会長、こいつとやってくれません?こいつ、めっちゃ頭いいんで、会長といい勝負になると思いますよ。な、柏木?」
そう言ってアイザックくんの肩をポンと叩いた。
なんでも、アイザックくんは1年生で断トツトップなんだそうだ。
アイザックくんはビクッと肩を揺らすと、おずおずと僕を見た。
知らない先輩(+藤森くん)に囲まれて、怯えているのかな、と思い、僕は、
「一緒にオセロやってくれる?」
と笑いかけた。
何故か松崎くんが倒れてしまったよ。
少しは安心したのか、アイザックくんは「ハイ…」と小さな声で返事をすると、僕の正面の席に腰を下ろした。
これが、僕とアイザックくんの出会い。
「ふふ、今日は僕の勝ちだね。」
そう言ってパチン、と白い石を最後のスペースに置いた。
アイザックくんは「ムム〜ッじゃあボクは3勝4敗デスネ〜!」と言って伸びをした。
あの日、僕はアイザックくんに負けてしまった。
でも悔しいとかはなくて、むしろ良い遊び相手が出来たって感じかな。
嬉しかったよ。
その後松崎くんがアイザックくんに「貴様ァッ!」って掴みかかったのは驚いたけれど。
(ちゃんと藤森くんが制したよ。)
それから僕の生徒会が無くて、アイザックくんの部活が無い水曜日に、毎週科学室でオセロをしたり話したりしているんだ。
アイザックくんがオセロを片付けていると、ドアがガラリと開いた。
「あ、もう終わっちゃいました?」
そう言って1人の男子が入ってきた。
どうやら、藤森くんが購買でお菓子を買ってきてくれたみたいだ。
藤森くんは持っていたビニール袋をテーブルに置くと、僕の隣に座った。
アイザックくんは、「モリフジクン、お菓子買ってきてくれたデスカ??」と言って目をキラキラと輝かせている。
対する藤森くんは、「は?お前にじゃないし。」とスナック菓子の袋を開けながら冷たく言い放った。
「ふえぇ!モリフジクン酷いデスーー!!」
「げ…あーもー嘘だから泣くなって……ホラ食っていいから……」
泣き出したアイザックくんに、藤森くんが溜息を吐きながらお菓子を差し出すと、アイザックくんはピタリと泣き止んだ。
「やったデス!モリフジクン大好きデーーース♡」
「俺藤森だから」
そう言って藤森くんはまた溜息を吐いた。
藤森くんはあまりアイザックくんのことが得意じゃないみたい。
あんなに可愛いのにね。
まあきっと、そんな事を言ったら、藤森くんは「全然可愛くないです」って言うんだろうなあ。
「宗吉は今頃部活かなぁ……」
「…会長、結城先輩のことしか考えてないんすね……」
「そんな事…………あるかな。」
「あるんすね…」
藤森くんが大きな溜息を吐いた。
「??カイチョサンは、フクカイチョサンのこと好きなのデスカ?」
アイザックくんが二つ目のお菓子をポリポリ食べながらそう尋ねる。
僕は「うん、そうだよ」と軽く答えた。
「ちょっ会長なに言ってんすか…他の生徒にバラされたら結城先輩殺されますよ……」
藤森くんが眉を寄せてそう咎めた。
「会長は学園のアイドルって自覚が足りないんすよね…こりゃ結城先輩も苦労するわ…」
「ボク言わないデスヨ!ぜーったい!!」
「本当かよ……まあこいつちょっとズレてるし大丈夫か。つか、柏木も会長のコト好きなんじゃないの?」
「ボクはカイチョサンもモリフジクンも大好きデス!!」
「ふふ、嬉しいな。ありがとう。…良かったね、藤森くん。」
「……こいつに好かれても嬉しくないっす…」
藤森くんが、げんなりとした顔でそう答えた。
寮に帰ると、藤森くんはトイレに行ったので、アイザックくんと2人で備品室に行った。
オセロやトランプ、ボードゲームはこの備品室に置いてあるため、毎回きちんと片付けなければいけない。
棚に戻して出て行こうとすると、アイザックくんに引き止められた。
「カイチョサン…っあの…っ」
「うん、なんだい?」
「ボク、絶対言いませんから!フクカイチョサンのこと!!」
「……うん。ありがとう。」
そう言って頭を撫でると、アイザックくんはにこにこと笑った。
「へへ…カイチョサンはお兄ちゃんみたいデスネ」
「そう?僕、末っ子なんだけどな。」
「兄弟いるんデスネ…羨ましいのデス!僕一人っ子だったから…」
そう言ってアイザックくんが寂しそうに笑ったから、僕は撫でるのをやめて顔をこちらに向かせた。
「じゃあ、僕の弟になってよ。君みたいな弟が欲しかったんだ。後輩だけど藤森くんは…弟って感じがしないからね。」
僕がそう微笑むと、アイザックくんはぴょんぴょんと飛び跳ねて、「え!なりマスなりマス!!嬉しいデス〜!」と言ってくれた。
「確かにモリフジクンは弟キャラではないデスネ。
でも、クラスで唯一話しかけてくれるデスヨ!!あんまり人がいない時か、カイチョサンがいる時デスケド…」
「へえ、そうなんだ。藤森くんに話しかけられると嬉しいの?」
「ハイッ!ボク、モリフジクン大好きなんデスヨ!モリフジクンもなんだかんだ言って、ボクのこと好きデス。」
「ふふ、そうかもね。」
そこは肯定できないから笑って流しておいた。
しばらく話をして、そろそろ部屋に戻ることにした。
でも、一緒に出てきたところを他の生徒に見られたら色々と言われてしまうからね。
先にアイザックくんが出て行くことにした。
「それじゃあ、おやすみなさいデス!…あ、フクカイチョサンと仲良しなると良いデスネ!」
そうこっそり付け加えて、アイザックくんはウインクした。
「…うん。ありがとう。僕も、いつでも相談に乗るからね。君は僕の弟なんだから。」
僕はそう言って微笑んだ。
「ハイ!!」
アイザックくんは少し照れ臭そうに笑うと、部屋を出て行った。
こうして僕に、可愛い弟が出来た。
まあこの後、宗吉には変な風に誤解されちゃったんだけどね。
それはアイザックくんには秘密にしておこうか。
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