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付き人宗吉
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文化祭が終わり、早1ヶ月半。
夏休みに入った。
全校生徒の大半は、会長に会えなくなる、と嘆いている。
香坂に至っては、「高平会長のお見送りとお出迎えをする。」と、なかなか帰省しなかった。
松崎も同じだ。
俺はというと、部活がお盆で丸々1週間休みなので、その1週間、会長と共に帰省する。
その為、結局会長と夏休みは一緒なのだ。
ああ...今も親衛隊と松崎からの視線が痛い......
俺は足早にそこを抜けると、自分の部屋の扉を勢いよく閉めた。
「...薫、そろそろ出るぞ。
もう見送りの奴らが廊下で列をつくってる。」
「待って。まだ仕度が終わっていないんだ。」
「そんなん実家に服とか下着とかあんだろ...貴重品だけにしろって。」
「そうだね。じゃあ、もう出ようか。」
会長はバッグを手に取ると、俺のほうに歩み寄ってきた。
「手、繋いでいくかい?」
「殺されるぞ」
俺がね。
「はは、冗談だよ。行こうか。」
まったく。
俺は溜め息を吐くと、扉を開けた。
廊下には両脇に人が立っており、その列は入り口まで続いていた。
...ハリウッドスターの来日みたいだな。空港か、ここは。
俺はそう思いながら、会長の後に続いた。
SP的な役割は親衛隊員がやってくれている。
「会長、お気をつけて!」
「ゆっくりしてきてください!」
「俺達のことを、どうか忘れないで下さいね!」
そんな声が聞こえてくる。
今生の別れじゃないんだぞ、オイ。
会長はニコニコしながら「いってくるよ」と手を振っている。
......プロだ。
俺は感心した。
俺達はようやく外へ出ると、会長が俺に笑いかけてきた。
「宗吉も手ぐらい振ったら良かったのに。」
「俺は付き人みたいなもんだから。」
残念なことに、副会長は人気がないからな。
平凡ですいませんね。
会長は横でふふ、と笑っている。
「...なんだよ?」
俺が眉をひそめて会長を見ると、会長は「いやあ...その、ね」と笑う。
「宗吉と外に出るの、あのデート以来だなって思って。ちょっと思い出してしまったんだ。」
ああ、そうか。
確かに文化祭の準備やら期末テストやらで忙しくて、全然外に出なかった。
テスト終了後に菅谷とはラーメン屋に行ったけど。
俺は「そうだな」とだけ答える。
会長は先程、生徒達に向けていたスターの笑顔ではない笑みを浮かべて、
「夏休みはずっと一緒だね。」
と言った。
......ドキ。
って!
な、なにがドキだよ俺!
俺は髪をがしがしと乱すと、「電車乗り遅れるから急ぐぞ!」と早歩きした。
会長は「あ、待ってよ~」と後ろに付いてきた。
本当にどうしたんだよ俺......っ
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