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新社長
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「そういえば、電話で言ってた話したいことってなんだい?」
会長が思い出したように尋ねると、悟さんは微笑んでこう言った。
「ああ、実はね、私来年から社長になるんだ。」
えっ
会長は普通に「おめでとう」と言って微笑んでいる。
いや、ちょっと待て。
すんなりしすぎだろ。
「悟さん…まだ若いですよね?」
「ああ、今年で25だよ。」
「まだお父上はご健在ですよね?」
「51だからね。ピンピンしてるよ。」
ええー…
俺は困惑しながら会長の方を見た。
会長はふふ、と笑うと、
「父さんはそのままスライドして会長になるんだ。兄さんは2年働いてきた実績があるし、たぶん大丈夫だよ。」
と言った。
…たった2年かよ
俺は、これから親の七光りだとか社員から小言を言われるであろう新社長を見て、溜め息を吐いた。
そんな俺の様子を見て、悟さんは、
「宗吉くんの言いたいことは分かるよ。まだまだ修行が足りないって事だろう?
本当はもう少し遅い予定だったんだけど、父さんに無理を言って、早めてもらったんだ。」
と言って脚を組んだ。
なるほど。それなら、それなりの理由があるんだろうな。
悟さんは続ける。
「だって社長になれば、社長室でイケないコトとか、できるだろう?」
「…悟さん……」
「…兄さん………」
本当にそんな理由で就任を早めたなら、高平コーポレーションに未来はないだろう。
俺と会長が軽蔑の眼差しを向けると、悟さんは「冗談さ。」と言って笑った。
いや、当たり前だわ。
でも悟さんが言うと冗談に聞こえないんだよ。
会長もそう思っていたらしく、未だに冷ややかに見ている。
悟さんは脚を組み替えながら話す。
「私はちょっと改革をしたくてね。ちゃんとしたビジョンがあるんだ。父さんにもその旨を伝えてある。まあ、まずは社員の給料をあげようかなー。」
「そんな給料なんてすぐにはあげられないでしょう…」
「大丈夫。考えがあるんだ。私に出来ないことはないって昔から言っているだろう?」
出来ないことはない……
ナポレオンのような言葉。
悟さんの昔からの口癖だ。
そう言って、失敗した例はない。
すると悟さんの顔が真剣な表情に変わる。
「給料を上げて、少しでも彼の助けになりたいんだ。」
…まるで、その彼のために社長になると言っているようなものだ。
悟さんは心底その社員さんのことが好きなようだ。
会長と俺は顔を見合わせると、思わず苦笑してしまった。
たぶん、思っていることは同じだろう。
((社員さん頑張れ…!))
…色々な意味で。
視界の隅に映る、部屋の壁に掛けられた鎖が、キラリと光った。
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