アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏休みのとある1日
-
帰省してから4日経った昼下がり。
特にすることもないので、会長の家を訪ねようと思った。
俺は自宅の門を開けると、会長の家に足を向かわせる。
小学生の頃とかも、よくこうしてお互いの家に「遊ぼー」とか言いに行ったな…
すると、向こうから会長が歩いてきた。
こちらに気がついたようで、ふわりと微笑みかけてきた。
「あれ、宗吉。出かけるの?」
「ああ、薫ん家行こうと思って。」
「奇遇だね。僕も宗吉の家に行こうと思っていたんだ。ねえ、久し振りに歩かない?」
「んー…たまにはいいな。じゃ行くか。」
会長は俺の横に並ぶと、一緒に歩き始めた。
通っていた小学校の周りはすっかり住宅街になっており、道も綺麗に舗装されてはいるが、小学生の時に遊んでいた公園や川沿いの並木道は変わっていなくてホッとした。
去年の夏は海とか遊園地とかへ行ってしまって、ゆっくり地元を歩かなかった為、ちゃんと歩くのは1年以上ぶりだろう。
会長は眩しそうに太陽に手をかざした。
「今日は日差しが強いね。」
「あ、お前日焼け止めとか良いのか?」
会長は昔から色素が薄く、日に当たると肌が赤くなってしまう。
それが見ていてあまりにも痛々しいので、会長と一緒に海水浴などに行ったことはない。
会長は「まだ大丈夫かな」と言って笑った。
「ちょっと日陰で休むか。俺も疲れたし。」
俺は会長が少し心配だった為、そう提案すると、2人で近くの小さな神社に入った。
そこの石段に腰を掛けると、とても涼しかった。
あれ…この神社なんか見覚えがあるな……
俺はキョロキョロと境内を見回した。
すると会長が口を開いた。
「ここ、僕が宗吉と初めて会ったところだ。」
……え。
「そ、そうだったか?」
「うん。引っ越して来たばかりで、ふらふらしてたら、ここに来たんだ。それで、帰れなくなって1人で困っていたら、宗吉が話しかけてきたじゃないか。」
…………あ!
俺ははっきりと思い出した。
俺が幼稚園をこっそり抜け出して来たら会長がここで蹲ってたんだっけ。
「そうそう。俺、お前が体調悪いのかと思ってびっくりしたんだよなぁ…まさか迷子だったとは」
「しかも家が近所だったなんてね。なんですぐにあそこの家の子だって分かったの?」
「沙希子さんにすごく似てたからな。引っ越して来た時沙希子さんをチラッと見て、すげえ美人さんだって思って、忘れなかったんだよな。」
小さい頃の会長は、今よりもっと母親似だった。
ズボンを履いていなかったら女の子だと思っていただろう。
「でも、よく覚えてたな。」
俺がそう言って隣に座る会長を見ると、
「ふふ、神社に入った瞬間わかったよ。」
と微笑んだ。
記憶力いいなー、会長。
俺はそよそよと吹く風になびく会長の髪をぼんやりと見つめた。
そっか…会長と10年以上一緒にいるのか…俺。
そりゃ家族みたいな感じにもなるよな。
…つまり俺が、会長は西園寺のこと気になってるのか、とか考えてしまうのは家族同然だからなだけで…
……いや、なんでそこで西園寺が出てくるんだ
いやいや、家族同然だから気になるのは仕方ないよな…
すると会長と目が合う。
会長は「今、何考えてたの?」とふふ、と笑った。
「……薫のこと」
俺が正直にそう答えると、会長は少し驚いたように尋ねた。
「……え…っと…?」
「こんな長くいると、もう家族みたいだよな〜って」
「……そっか…家族、かぁ……」
会長はそうとだけ呟くと、立ち上がってこちらを見下ろした。
逆光で顔がよく見えなかったが、口元は笑っているように見えた。
「今から宗吉の家に行ってもいいかい?七瀬ちゃんに会いたいし、恵さんにも。」
恵、とは俺の母さんのことだ。
俺も立ち上がりながらああ、と答える。
きっと七瀬は泣いて喜ぶだろうな。
もちろん、母さんも。
そしてまた来た道を2人で戻ったのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
96 / 168