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第三話 大失敗の、自己紹介
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「はい、皆席につけよー。
俺がこのクラスを一年間受け持つ山本 敬(やまもと けい)だ。教師になってまだ三年、お前らと歳も近いから何でも気軽に相談してくれよな!」
担任の簡単な挨拶の後、待ちに待った自己紹介が始まった。
人見知りな俺は目立つことが大嫌いだが、天使ちゃんの事を知る絶好のチャンス。右斜め前に座る天使ちゃんをこっそりと見つめつつ、その順番を待った。
「椎名 栞(しいな しおり)です。趣味はピアノです、どうぞよろしくお願いします。」
名前まで可愛いじゃねーか・・・
清楚で可憐な響き。なんてピッタリなんだ。
天使ちゃんがモジモジと自己紹介をする姿に癒されていると、天使ちゃんの後ろに座る爽やかイケメンヤローが立ち上がった。
爽やかイケメンヤローが自己紹介している間中クラスの女子がかっこいい、王子様みたい!と大騒ぎし始めて、改めてそいつの格好良さを実感。
なんて、女子ウケのいいヤツなんだ・・・
俺とは正反対な雰囲気にちょっとだけ嫉妬していると、いつの間にか俺の前の席の奴が挨拶をし終えていて…
慌てて立ち上がると勢いが付き過ぎて椅子が後ろの席にガンッと物凄い音を立ててぶつかってしまった。
ガンッ!!!!
‥‥‥‥‥‥
最悪だ。
「あっ、すみません!!!!」
慌てて後ろを振り向くと、目がクリクリして可愛らしい雰囲気の男子がいて・・・
「ププッ…いいからいいから、自己紹介どうぞ。」
笑われた・・・
無難に終われたらいいと思っていたのに、俺、カッコ悪すぎる・・・!
クラスの奴らも唖然としているし、天使ちゃんもビックリしてこちらを見ていて、俺は軽くパニックになった。自己紹介も、もう何を言ったかなんて覚えていなかった。
「ねぇねぇ、さっきは目立っちゃったね。ふふふ
僕のことは、名前で呼んでー♪希でいいよ!」
ホームルームが終わり、後ろの席の森田 希(もりた のぞみ)がツンツンと俺の肩をつついて話しかけてきた。
「・・・・・・・・・・・。」
落ち込むのを隠しきれない俺。
振り向いて、椅子の背をギュッと握ったまま、ズーンッと下を向いてしまった。
「ちょっ、ちょっとーそんな落ち込まないでよ!
なんか君のキャラ、見た目と全然違うんだね。かわいいなぁ〜
僕親近感わいちゃったよ〜!」
かっ可愛いってなんだよ!
見た目と全然違うって、俺、結構気にしてんだけど・・・・
可愛らしい顔と喋り方の癖にピンポイントで俺の心をエグる希。キッと睨んでみたものの・・・
「もうね、そんな威嚇通用しませんよー。ふふふ
いいじゃん!皆の印象に残ったんだしさ!
僕気に入っちゃったよ。
聡太君、これから仲良くしようよ。
よろしくー」
クスクス笑いながら握手を求めてくる希。手を差し伸べられるとついつい手を出してしまう俺達の横で、爽やかイケメンヤローこと、朝比奈は女子に囲まれて質問責めにあっていた。
「朝比奈君ってどこに住んでるの?」
「趣味は?」
「部活とか入るの?」
「彼女はいる?!」
女子達の質問にニコニコと綺麗な目を細めて答えている朝比奈。
少し釣った目元が、笑うと綺麗に細められて凄く優しい印象になる。
「彼女はいないよ」
『きゃー!本当ー!?』
この回答に女子達の大合唱が教室中に響いた。
「なんか、女の子ってすごいね…」
独り言のように呟いた希の言葉にただ大きく頷く俺なのであった。
☆
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